スタートアップの採用は「知名度ゼロ」「給与で勝てない」「人事不在」という三重苦からスタートします。一方で、マイナビ「中途採用状況調査2025年版」では企業の90.1%が中途採用に積極的という超売り手市場が続いており[1]、優秀層の獲得競争は激化する一方です。本記事では、シード/アーリー/シリーズA/シリーズBの4フェーズで採用課題がどう変わるかを整理し、それぞれの段階で採用代行(RPO)をどう活用すべきかを実例ベースで解説します。※相場・推計値は当社推計/業界相場目安です。
1. なぜスタートアップに採用代行が向いているのか
スタートアップの採用には3つの構造的な制約があります。
(1) 人事専任を置けない。シード〜アーリーの段階では、創業者が採用面接・媒体運用・候補者対応をすべて担うのが一般的です。リクルートワークス研究所の中途採用実態調査では、募集ポジションのうち57.8%が未充足のまま終わっており[2]、その背景には人事リソース不足が大きく影響しています。(2) 給与で勝負しにくい。大手と比較した給与水準の劣後を、ミッション・カルチャー・成長機会で埋める必要があります。マイナビ調査では応募決定要因として「給与」23.2%、「仕事内容のおもしろさ」21.0%とほぼ拮抗しており[1]、後者の訴求力を磨ければ十分戦えます。(3) 採用ノウハウが社内に蓄積されていない。組織が小さいため、毎回ゼロから設計することになりがちです。
採用代行は、この3つの制約を「外部リソース+ノウハウ提供」で部分的に補える手段です。ただし、丸投げしてしまうとノウハウが社内に残らず、シリーズB以降の内製化が難しくなるというジレンマもあります。ここの設計が、スタートアップ×採用代行の成否を分けます。
2. フェーズ別:採用課題と採用代行の使い方マップ
| フェーズ | 従業員規模 | 採用ポジション | 主な課題 | 採用代行の使い方 | 月額予算目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| シード | 1〜10名 | 共同創業者・初期エンジニア・初期セールス | 知名度ゼロ、媒体を選べない、創業者の時間不足 | 媒体運用+スカウト送信の代行 | 5〜15万円 |
| アーリー | 10〜30名 | 採用1人目人事、開発リーダー、CS | 採用フロー不在、選考基準が属人化 | 採用設計+スカウト+日程調整 | 15〜30万円 |
| シリーズA | 30〜80名 | 事業責任者、PdM、複数エンジニア | 急拡大による母集団形成の遅れ | 母集団形成+一次スクリーニング+ATS導入 | 30〜60万円 |
| シリーズB | 80〜200名 | VP/部門長、複数チーム | 採用組織の内製化、評価制度との連動 | 採用組織設計+ナレッジ移管+部分委託 | 40〜80万円 |
※当社推計値。投資ラウンド・業種・採用ポジション数で変動します。
3. シード期(1〜10名):媒体運用+スカウトに集中投資
採用課題:知名度ゼロ、媒体掲載しても応募が来ない、創業者の時間が採用に取れない。
典型ポジション:エンジニア1〜3名、セールス1〜2名、コーポレート(管理)1名。
採用代行の最適活用法:
- Wantedly運用代行:共感採用に最適。ストーリー記事の取材と公開を月2〜4本回す。詳しくはWantedlyの運用代行とはを参照。
- スカウト送信代行:Wantedly/Green/ビズリーチ等のスカウト機能を、ターゲット要件に沿って週単位で送信。
- 媒体管理:求人票のメンテナンスと改善A/Bテスト。
避けたい使い方:選考・面談まで代行に丸投げするのは厳禁。シード期の選考はカルチャーフィット判断の最重要工程であり、創業者本人が必ず面談に出るべきです。代行はあくまで「面談機会を増やす土台」の役割に徹してもらいます。
4. アーリー期(10〜30名):採用フローの仕組み化
採用課題:採用判断が属人化、選考辞退率が高い、内定承諾率が読めない。
典型ポジション:1人目人事、開発リーダー、CSマネージャー、複数のジュニアエンジニア。
採用代行の最適活用法:
- 採用ペルソナの言語化:必須・歓迎・NG条件を職種別に文書化。
- 選考フロー設計:1次(カジュアル)→2次(実技)→最終(経営陣)の3段階に整理し、各段階の合格基準を明文化。
- スカウト+日程調整+応募者対応の一気通貫:応募から24時間以内のSLAを設定。
- 2024年4月労働条件明示改正への対応:求人票に「業務の変更範囲」「更新上限」「無期転換」等を必ず反映[3]。
注意点:このフェーズで「1人目の人事採用」を本気で考えるべきタイミングです。採用代行を伴走パートナーとしながら、社内の人事1人目に知見を引き継ぐ設計が重要。詳しくは本サイトの採用代行で失敗する7つのパターンも参考に。
5. シリーズA(30〜80名):母集団形成と一次スクリーニング
採用課題:採用計画が一気に増加(年間20〜50名規模)、人事1〜2名では捌けない、有効求人倍率1.18倍の市場で母集団が形成できない[4]。
典型ポジション:事業責任者、PdM、テックリード、複数のミドルエンジニア、マーケ・営業の各2〜3名。
採用代行の最適活用法:
- 母集団形成の専任化:スカウト送信を週次で計画的に実行、業界横断で候補者プールを構築。
- 一次スクリーニングの委託:書類選考・カジュアル面談初回を代行に任せ、人事は二次選考以降に集中。
- ATS(採用管理システム)導入支援:候補者進捗の可視化、選考ボトルネックの定量分析。ATS導入で採用工数が3割削減された事例もあります。
- レポーティング:月次で応募数・面談化率・選考化率・承諾率を可視化し、改善サイクルを回す。
このフェーズで最も大切なこと:採用ノウハウを社内に蓄積する仕組みを契約に組み込むこと。月次MTGでナレッジ移管、成果物(スカウト文面・選考基準・分析レポート)の自社帰属を明文化します。
6. シリーズB(80〜200名):内製化への段階的移行
採用課題:採用組織を立ち上げる必要、VP/部門長クラスの採用、評価制度との連動、退職リスクへの備え。
典型ポジション:採用責任者(VP HR候補)、複数の部門長、組織横断のPdM・テックリード。
採用代行の最適活用法:
- 採用組織の設計支援:採用責任者・リクルーター・コーディネーターの役割定義。
- ナレッジ移管:シード〜シリーズAで代行が蓄積したノウハウを社内人事に体系的に引き継ぐ。
- 部分委託への移行:高難度ポジション(VP・専門職)のみエグゼクティブサーチ系に切り出し、一般ポジションは内製化。
- 退職リスクへの備え:採用ノウハウが特定の担当者に集中しないよう、複数人での運用設計。
このフェーズは「採用代行からの段階的卒業」がテーマ。3〜6ヶ月で内製化比率を50%→80%→100%へ移行する設計を、契約時から逆算しておくのがコツです。
7. スタートアップが採用代行を選ぶ際のチェックリスト
| 確認項目 | OKの目安 |
|---|---|
| スタートアップ支援の実績 | 同規模・同フェーズの支援実績3社以上を提示できる |
| 共感採用の理解度 | 給与で勝てない前提の訴求設計ができる |
| 担当者の専任性 | 営業ではなく実運用担当者が窓口になる |
| 短期トライアル可否 | 1〜3ヶ月のテスト運用が可能 |
| ナレッジ移管設計 | 月次MTGでノウハウ共有、成果物の自社帰属を明記 |
| 許可番号 | 候補者斡旋を含む場合は許可番号(13-ユ-XXXXXX)を確認[5] |
| 2024年4月改正への対応 | 労働条件明示の改正項目を求人票に反映できる[3] |
| 解約条件 | 最低契約期間が3〜6ヶ月以内、解約予告1ヶ月以内 |
8. 予算とROIの考え方
採用代行を「月額○万円のコスト」として見るとROI判断を誤ります。未採用による機会損失と合わせて評価すべきです。
| 項目 | シード | シリーズA | シリーズB |
|---|---|---|---|
| 採用代行費(年額) | 60〜180万円 | 360〜720万円 | 480〜960万円 |
| 媒体費(年額) | 30〜100万円 | 200〜500万円 | 500〜1,000万円 |
| 採用1名あたり総コスト | 50〜100万円 | 80〜150万円 | 120〜250万円 |
| 未採用1名あたり機会損失(粗利) | 300〜600万円/年 | 500〜1,000万円/年 | 800〜2,000万円/年 |
※当社推計。事業・職種で変動します。シリーズBの採用1名あたりコストは年収の20〜30%程度に収まれば妥当な水準です。
9. よくある質問
Q1. シード期に採用代行は早すぎませんか?
早すぎません。むしろシード期こそ、創業者の時間を採用候補者との「面談」に集中させるために、媒体運用とスカウト送信を外部化する価値が高いフェーズです。ただし、選考・カルチャー判断は必ず創業者が担うべきです。
Q2. 採用代行とエージェント(人材紹介)はどう使い分けますか?
採用代行は採用業務の継続運用、エージェントは個別ポジションの候補者紹介に強みがあります。エンジニアの母集団形成は代行、VP・専門職などのレア人材はエージェント、と使い分けるのが現実解です。
Q3. スタートアップに強い採用代行の見分け方は?
「シード〜シリーズAの支援実績」「共感採用の理解度」「短期トライアル対応」の3点を確認してください。大手企業向けに強い代行会社は、スタートアップ案件で運用が大味になりがちです。
Q4. 採用代行を入れたら自社の人事は不要になりますか?
むしろ逆です。シリーズA前後で必ず「1人目の人事」を採用するべきで、代行はそのナレッジ移管パートナーとして使うのが理想形です。完全に丸投げすると、シリーズB以降の内製化が困難になります。
Q5. シリーズBで採用代行から卒業するタイミングは?
採用責任者(VP HR)の入社+人事チーム3〜5名体制が組めた段階が目安です。ただし急にゼロにせず、高難度ポジション(VP・専門職)の部分委託は継続する形が現実的です。
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参考資料
- マイナビ「中途採用状況調査2025年版」 ─ 中途採用に積極的な企業90.1%、1社平均採用予定数20.8人、応募決定要因「給与」23.2%・「仕事内容」21.0%。
- リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2023年度実績、正規社員)」 ─ 募集ポジションのうち約57.8%が未充足。
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 ─ 募集・労働契約締結時に変更範囲・更新上限・無期転換等の明示義務化。
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」 ─ 有効求人倍率1.18倍、正社員有効求人倍率1.05倍。
- e-Gov法令検索「職業安定法 第30条(有料職業紹介事業の許可)」 ─ 有料の職業紹介事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要。
- 経済産業省「スタートアップ政策(新規事業創造推進政策)」 ─ 政府スタートアップ育成5か年計画(2022年策定)の枠組み。
