採用体制の構築手順6ステップ|社員数別の体制図テンプレとRACI表【専任者ゼロから3カ月】

「採用体制を整えたい」と考えたとき、多くの企業がまず「採用担当を1人置こう」と考えます。しかし人を置いただけでは体制になりません。採用体制とは、人の配置ではなく「5つの機能を、誰が・いつまでに・どの権限で担うか」を決めた設計図です。実際、Indeed Japanの調査では採用担当者の72.4%が他業務と兼務しており[3]、専任者を置ける中小企業はごく一部です。

本記事では、専任者ゼロの状態から3カ月で採用体制を立ち上げるための、社員数フェーズ別の体制図テンプレ・業務15項目のRACI表・6ステップの構築手順を掲載します。そのまま社内資料に転記して使える形式で整理しました。

この記事でわかること

  • 採用体制の5機能:計画・集客・選考・決定・事務という分解の仕方と、機能ごとの担い手の決め方
  • 社員数別の体制図テンプレ4パターン:〜30名/30〜100名/100〜300名/300名〜のモデル
  • 採用業務15項目のRACI表:社長・現場責任者・兼務担当・外部委託の役割分担テンプレ
  • 構築6ステップと5つの運用ルール:立ち上げの所要期間、コスト比較(兼務・専任雇用・外部委託)

1. 採用体制とは何か|「担当者を置く」ではなく「5機能を割り当てる」こと

採用体制の構築でつまずく企業の多くは、「誰がやるか」から考え始めています。正しい順序は逆で、まず「何をやる必要があるか」を機能に分解し、そのうえで担い手を割り当てます。採用業務は次の5つの機能に分けられます。

 機能具体的な業務求められる性質外部委託の可否
計画採用計画・予算配分・要件定義事業判断△(伴走支援まで)
集客媒体運用・スカウト・求人原稿・広報運用スキル
選考書類選考・面接・評価見極め力○(一次まで)
決定条件提示・意向醸成・内定承諾権限と信頼×(自社が担う)
事務日程調整・連絡・データ管理・入社手続き正確さと速さ

この5機能のうち、①計画と④決定は自社が持ち続ける必要があります。事業判断と最終的な意思表示だからです。一方で②集客と⑤事務は運用スキルの世界であり、社内に専任者がいなくても外部の力で埋められます。③選考はその中間で、評価基準を文書化できていれば一次選考までは外に出せます。

【ここだけ押さえる】

「採用担当がいないから体制が作れない」というのは誤解です。5機能のうち自社が握るべきは①と④だけ。残りをどう埋めるかは、人を雇う・兼務で回す・外部に委託するという3つの選択肢の組み合わせで決まります。体制構築とは、この組み合わせを設計することです。

体制がない状態で起きること

機能の割り当てが曖昧なまま採用を始めると、次の4つが必ず起こります。

  1. 【滞留】誰が返信するのか決まっていない:応募が来ても「誰かが見ているだろう」となり、初回返信が2〜3日遅れます。HRプロの調査では、面接日程調整の理想を「当日中」または「翌日中」と回答した企業が71.2%にのぼる一方、実際は3〜5日を要する企業が29.7%あります[8]
  2. 【差し戻し】選考基準が共有されていない:現場と人事で判断が割れ、書類選考と面接をやり直すことになります。
  3. 【停止】担当者の本業が忙しくなると採用が止まる:兼務前提の体制では、繁忙期に採用活動そのものが数週間停止します。
  4. 【消滅】ノウハウが記録されない:媒体別の応募数も、見送り理由も残らず、翌年また同じ試行錯誤を繰り返します。

Indeed調査によれば、従業員300名以下の企業では業務全体のうち採用に割けている時間が平均35.5%にとどまります[3]限られた時間を機能の隙間で溶かさないことが、体制設計の最大の目的です。

「体制がある」と言える3つの条件

自社に体制があるかどうかは、次の3点で判定できます。1つでも欠けていれば、それは体制ではなく個人の頑張りです。

  1. 【継続性】担当者が2週間不在でも採用活動が止まらない:手順とアカウント情報が共有されていれば、代役が動けます。止まるなら属人運用です。
  2. 【再現性】誰が対応しても同じ品質の返信・選考ができる:テンプレートと評価基準が文書化されている状態を指します。
  3. 【追跡性】先月の応募数と見送り理由が5分で分かる:記録が一箇所にあれば即答できます。探し始めるようなら、記録の仕組みがありません。

この3条件は、体制構築のゴール設定としてそのまま使えます。逆に言えば、体制図を描く目的は「組織図を綺麗にすること」ではなく、この3つを成立させることにあります。

2. 【社員数フェーズ別】採用体制図テンプレ4パターン

体制の形は、社員数と年間採用数によって変わります。自社に近いフェーズをそのまま転記して使ってください。

フェーズ社員数年間採用数①計画②集客③選考④決定⑤事務
F1:専任ゼロ型〜30名1〜3名社長外部委託社長+現場社長外部委託
F2:兼務担当型30〜100名3〜10名社長+兼務担当兼務担当+外部委託現場責任者社長外部委託
F3:専任1名型100〜300名10〜20名人事責任者専任担当現場+人事役員事務担当or委託
F4:チーム型300名〜20名〜人事責任者集客担当選考担当役員事務担当

※当社推計/業界相場目安

F1(〜30名・専任ゼロ)の設計ポイント

最も多いのがこのフェーズです。社長が①計画と④決定を握り、②集客と⑤事務を外に出すのが基本形になります。社長が採用に使う時間は、月に「初期の要件すり合わせ2時間+面接+月1回の定例30分」に収まります。

  • 社長が持つもの:どんな人を何名採るか、いくらまで出すか、最終的に採るかどうか
  • 現場責任者が持つもの:スキル面の見極め、入社後の受け入れ
  • 外に出すもの:求人原稿、スカウト送信、応募者対応、日程調整、リマインド

F2(30〜100名・兼務担当)の設計ポイント

総務・経理・管理部門の誰かが採用を兼務するフェーズです。兼務担当に全機能を負わせないことが最重要になります。兼務担当が持つのは②集客の一部と全体の進行管理のみとし、③選考は現場責任者、④決定は社長に明確に分けます。

【回避策】

F2で最も多い失敗は、兼務担当が「採用の全部」を抱えてしまうことです。本業が忙しくなると採用が止まり、担当者が疲弊して離職するリスクも生まれます。兼務担当の採用業務は月20時間以内に収まる設計にし、それを超える分は外部に出すか、社長・現場に戻してください。※当社推計/業界相場目安

F3・F4の設計ポイント

専任者を置けるフェーズでは、①計画を人事責任者が持ち、社長は④決定に専念する形に移行します。F4になると集客・選考・事務を分業できるため、各機能の専門性が上がります。ただし分業には情報共有のコストが伴うため、週次15分の定例と、候補者情報の一元管理が前提条件になります。

F1体制の1週間の動き方

体制図だけでは実感が湧きにくいため、F1(〜30名・専任ゼロ)が実際にどう動くかを1週間の流れで示します。

曜日社長現場責任者外部委託
週次15分の定例に参加週次15分の定例に参加数値レポート提出・今週の送信計画共有
書類選考(前週分をまとめて30分)スカウト送信・応募者への初回返信
面接1〜2件面接1〜2件日程調整・前日リマインド送信
面接評価の入力(15分)応募者対応・媒体の原稿調整
合否の最終判断(15分)合否連絡の送信・翌週の日程確保

※当社推計/業界相場目安

社長が採用に使う時間は週あたり1.5〜3時間、現場責任者は週2〜3時間に収まります。ポイントは、判断が必要な業務を曜日で固定することです。「気づいたときに対応する」運用にすると、忙しい週に必ず滞留します。書類選考は火曜、最終判断は金曜と決めておけば、候補者への回答も予測可能になります。

専任者がいない状態からの立ち上げ方は、採用担当が不在でも採用できる!専任者ゼロの企業がやるべきことでも解説しています。

3. 【RACI表】採用業務15項目の役割分担テンプレ

体制図ができたら、次は業務単位の役割分担です。RACIは、業務ごとに4つの役割を割り当てる整理法です。

  • R(Responsible)=実行する人:手を動かす担当。1業務に1人が原則。
  • A(Accountable)=最終責任者:最終決定と承認を行う。1業務に必ず1人だけ。
  • C(Consulted)=相談される人:実行前に意見を求める相手。
  • I(Informed)=報告を受ける人:結果を知らされる相手。

以下はF1〜F2(社員100名未満・専任者なし)を想定したテンプレです。

 業務社長現場責任者兼務担当外部委託
1採用計画・人数の決定A/RCI
2採用予算の決定A/RII
3求人要件の定義ARCC
4求人原稿の作成ICAR
5媒体の選定・契約AIRC
6スカウト候補者の抽出ICAR
7スカウト文面の作成・送信IIAR
8応募受付・初回返信IIAR
9書類選考IRAC
10面接日程の調整ICAR
11一次面接の実施IRIC
12最終面接の実施A/RCI
13条件提示・内定通知A/RIC
14内定者フォローARCC
15労働条件通知書・入社手続きAIRC

※当社推計/業界相場目安。A=最終責任、R=実行、C=相談、I=報告

RACI表を作るときの3つの原則

  1. 【Aは必ず1人】 最終責任者が2人いる業務は、必ず滞留します。「社長と部長で相談して決める」という状態は、Aが不在なのと同じです。
  2. 【RとAは分けてよい】 実行者と責任者が別でも問題ありません。むしろ外部委託を使う場合はRが外部、Aが社内という形が標準です。
  3. 【Cは2人まで】 相談相手を増やすほど決まらなくなります。3人以上に意見を求める業務は、要件が固まっていない証拠です。

よくある割り当ての間違いと修正例

RACI表は作れても、割り当てを誤ると滞留します。実際に多い3つの誤りと修正の方向を示します。

誤った割り当て起きること修正後
3「求人要件の定義」のAを兼務担当に置く現場が「聞いていない」と言い、選考基準が後から覆るAは社長、Rは現場責任者に移す
9「書類選考」のRを兼務担当に置く業務の理解が浅く判断がぶれる/現場から差し戻されるRは現場責任者、Aを兼務担当(進行管理)に
8「応募受付・初回返信」のRを社長に置く本業優先で返信が2〜3日遅れ、候補者が離脱Rは外部委託または兼務担当に移す

共通しているのは、判断が必要な業務を実務担当に、実務を判断者に置いてしまうという取り違えです。切り分けの基準はシンプルで、「事業や人物の評価が入るならAは意思決定者、手順が決まっているならRは実務担当または外部」と考えてください。

【注意点】

表の12「最終面接」と13「条件提示」は、必ず社長または役員がA/Rを持ってください。ここを他者に委ねると、候補者から見て「誰が自分を採用したいのか」が見えなくなり、内定承諾率が下がります。就職白書2025によれば2025年卒採用で採用予定数を充足できた企業は37.2%[6]。候補者が複数の選択肢を持つ環境では、意思決定者が直接向き合うことそのものが訴求材料になります。

4. 採用体制の構築手順6ステップ|3カ月で立ち上げる

ここからは実際の手順です。専任者ゼロの状態から、おおむね12週間で運用に乗ります。

  1. 【第1〜2週】機能の棚卸しをする:本記事の5機能表を印刷し、現在それぞれを誰がやっているかを書き込みます。空欄になった機能が、体制の穴です。並行して直近3カ月の採用業務にかかった時間を実測します。所要2時間+実測1週間。
  2. 【第3週】体制図を1枚にまとめる:社員数フェーズ別テンプレから自社に近いものを選び、名前を入れます。A4横1枚に収めるのがルールです。収まらない体制は運用できません。所要2時間。
  3. 【第4〜5週】RACI表で業務を割り当てる:15項目テンプレに自社の担当者名を入れます。Aが2人になっている業務、Rが空欄の業務を潰します。この段階で「社内では埋まらない」と分かった行が、外部委託の候補になります。所要3時間+合意形成1週間。
  4. 【第6〜7週】運用ルールを決める:返答期限、選考期間、エスカレーション基準を明文化します(詳細は次章)。ルールは5つ以内に絞ってください。所要2時間。
  5. 【第8〜10週】情報の置き場所を1つにする:候補者一覧、評価基準、テンプレート文面、媒体アカウント情報を1箇所に集約します。スプレッドシート1枚と共有フォルダ1つで十分です。所要4時間。
  6. 【第11〜12週】試験運用と初回レビュー:1ポジションで実際に回し、詰まった箇所を修正します。30日後・90日後にレビュー日を先に設定しておきます。

【回避策】

6ステップを圧縮したいとき、省略していいのはステップ5だけです。ステップ3(RACI)とステップ4(ルール)を飛ばすと、体制図は作ったが運用されないという結果になります。実際、体制構築が失敗する原因の大半は「図は描いたが、誰がいつまでに何をするかが決まっていない」ことにあります。

採用に手が回らない状態から着手する場合の優先順位は、採用に手が回らない中小企業が今すぐできることも参考になります。

5. 体制に必ず組み込む5つの運用ルール

体制図とRACI表だけでは動きません。時間の約束を入れて初めて体制になります。

 ルール具体的な基準守れないときの対処
初回返信SLA応募から24時間以内に一次返信定型文の自動返信を設定する
選考ステップ期限各ステップ3営業日以内に次の連絡期限超過で自動的に次工程へ進める
決裁者の上限1ポジションの決裁者は2名まで3人目以降はC(相談)に格下げ
エスカレーション基準応募ゼロが2週間続いたら見直し会議トリガーをカレンダーに登録
定例の頻度週1回15分の進捗確認議題は数値3つのみに固定

※当社推計/業界相場目安

なぜスピードのルールを最優先にするのか

5つのうち①と②が最も効果が大きい理由は、候補者が複数社を並行して受けているためです。返信が遅れた企業から順に検討リストから外れます。厚生労働省の一般職業紹介状況によれば、2026年5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍[4]、帝国データバンクの調査では正社員の人手不足を感じる企業が50.6%です[5]。候補者優位の環境では、スピードは中小企業が費用をかけずに大企業と互角に戦える数少ない領域です。

定例は「数値3つ」に固定する

週次定例が長くなる企業は、議題が定まっていません。次の3つだけを確認する形に固定してください。

  1. 【今週の応募数】:ポジション別に、先週比で増減があったか
  2. 【滞留している候補者】:3営業日以上動いていない候補者が何名いるか
  3. 【今週決めること】:判断待ちになっている事項を1〜3件

この3項目なら15分で終わります。改善の議論は月1回の別枠で行い、週次は詰まりの解消だけに使うのが継続のコツです。

エスカレーション基準は「数字」で決めておく

ルール④のエスカレーションは、誰かが「まずい」と感じたときではなく、数字が閾値を超えたときに自動的に発動する形にします。感覚に依存させると、気づいたときには手遅れになるためです。

トリガー閾値発動する対応招集する人
応募ゼロが続く2週間求人票と媒体設定の点検兼務担当+外部委託
書類通過者の面接設定ができない5営業日面接官の枠を追加確保現場責任者+社長
内定辞退が連続2名連続条件と選考期間の見直し社長+現場責任者
兼務担当の採用稼働月30時間超委託範囲の拡大を検討社長
目標に対する進捗期の半分で50%未満採用計画そのものの再設定社長+役員

※当社推計/業界相場目安

閾値はカレンダーやスプレッドシートの条件付き書式で可視化しておくと、担当者が気を張らなくても発動します。体制設計とは、注意力に頼らなくても動く仕組みを作ることだと考えてください。

6. 採用体制のコスト比較|兼務・専任雇用・外部委託の3パターン

体制の形を決めるうえで避けて通れないのが費用です。「兼務は無料」という前提が最も危険なので、機会費用まで含めて比較します。

まず、採用担当者の時間単価を出します。

項目計算金額
想定年収450万円
総額人件費(社会保険料等込み・年収の約1.3倍)450万円 × 1.3585万円
年間労働時間8時間 × 225日1,800時間
時間単価585万円 ÷ 1,800時間約3,250円

※当社推計/業界相場目安

この単価で3パターンを比較します。年間5〜10名採用・常時2〜3ポジション募集という前提です。

パターン月額の見かけコスト社内の稼働機会費用を含む
実質月額
立ち上がり
A:兼務で全部やる0円約90時間約29万円即日(ただし本業が停滞)
B:専任者を1名雇う約49万円約15時間(管理)約54万円+採用費50〜150万円3〜6カ月
C:部分委託+兼務10万〜30万円約38時間約22万〜42万円2〜4週間
D:フル委託+社長の決定のみ40万〜80万円約10時間約43万〜83万円2〜4週間

※当社推計/業界相場目安。実質月額=見かけコスト+(社内稼働時間×3,250円)

Aの「兼務で全部やる」は、月29万円相当の社内工数を使っているということです。しかも採用のプロではない人が非効率に消化している時間であり、本業が止まる分の損失は含まれていません。

Bの専任雇用は、月額だけ見ると割高に見えますが、年間採用数が安定して10名を超えるなら合理的です。ただし採用と育成に3〜6カ月かかること、その人が辞めたら振り出しに戻ることは織り込む必要があります。

CとDは立ち上がりが速く、固定費にならない点が利点です。年間の採用数に波がある中小企業では、この形が最も現実的な選択肢になります。

【ここだけ押さえる】

比較の軸は月額ではなく、「支払額1万円あたり、社内で何時間が空いたか」です。Cのパターンで月20万円払って52時間空くなら、1万円あたり2.6時間。この数字で並べると、体制の選択は感覚ではなく計算で決められます。

自社の体制のどこが空いているか、無料でご相談いただけます。

7. 立ち上げ後に測る指標と、体制を見直すタイミング

体制は作って終わりではありません。30日・90日・180日の3回、決まった指標で点検します。

タイミング見る指標合格ライン下回ったときの手当て
30日後初回返信の平均時間24時間以内定型文と自動返信の設定
30日後滞留候補者数常時2名以下RACIのAが不在の工程を特定
90日後応募数(月あたり)目標採用数×10集客機能の担い手を見直す
90日後面接実施率60〜80%選考期間の圧縮
180日後内定承諾率60〜80%④決定機能の担い手を格上げ
180日後兼務担当の採用稼働時間月20時間以内超過分を外部委託へ

※当社推計/業界相場目安

体制を次のフェーズに上げる3つのサイン

社員数だけでなく、次のサインが出たらフェーズ移行を検討します。

  1. 【サインA】兼務担当の採用稼働が月30時間を超えた:本業が圧迫され、担当者の離職リスクが上がります。専任化か委託範囲の拡大が必要です。
  2. 【サインB】募集ポジションが4つ以上に増えた:職種ごとに要件定義とスカウト条件を作り直す必要があり、実質的に複数案件の並走になります。
  3. 【サインC】採用した人の定着に問題が出始めた:厚生労働省の調査では、事業所規模が小さいほど3年以内離職率が高く、5人未満で大卒約59%、30〜99人で約42%、1,000人以上で約28%という傾向があります[7]。採用体制に加えて、受け入れ体制の設計が必要な段階です。

90日レビューの進め方(所要45分)

3回のレビューのうち、最も重要なのが90日時点です。ここで体制が定着するか、形骸化するかが決まります。進行は次の順で行ってください。

  1. 【10分】数値の確認:初回返信時間・滞留候補者数・応募数・面接実施率の4つを読み上げます。解釈は後回しにし、まず数字だけを共有します。
  2. 【10分】詰まった工程の特定:RACI表を開き、この3カ月で最も滞留した業務を1〜2行選びます。「なぜ滞ったか」ではなく「どの行か」を先に決めるのがコツです。
  3. 【15分】原因の切り分け:滞留の理由が「Aが不在」「担当者の時間不足」「基準が不明確」のどれかを判定します。3つのどれにも当てはまらない場合は、体制ではなく市場側の要因である可能性が高くなります。
  4. 【10分】次の90日で変える1点を決める:変更は1つに絞ります。複数を同時に変えると、次のレビューで何が効いたのか判定できません。

【回避策】

レビューで最もやってはいけないのが、「今回は特に問題なし」で終わらせることです。数字が合格ラインを満たしていても、次のフェーズへの移行サインが出ていないかは必ず確認してください。体制は、社員数や採用数が変わった瞬間ではなく、その3〜6カ月前から歪み始めます。

【注意点】

指標が悪化したとき、担当者の努力不足と結論づけないでください。体制の問題は、ほぼ必ず「機能の割り当てが空いている」か「Aが決まっていない」かのどちらかです。RACI表に戻って、どの行が原因かを特定するのが正しい順序です。

8. 体制構築でつまずく5つの落とし穴と、2024年法改正で増えた責任

最後に、実際に多い失敗パターンを挙げます。

 落とし穴何が起きるか対処
体制図だけ作って運用ルールがない図は存在するが誰も見ないSLAと定例を先に決める
Aが2人以上いる業務がある判断が滞留し候補者が離脱Aは必ず1人に絞る
兼務担当に全機能を負わせる本業停滞・担当者の疲弊月20時間の上限を設ける
評価基準を渡さず選考を任せる判断が割れ、選考のやり直しが発生必須3・歓迎3・NG2の8項目に絞る
記録の置き場所が分散している引き継ぎに約30時間かかる情報を1箇所に集約する

※当社推計/業界相場目安

2024年4月の法改正で、体制に組み込むべき責任が増えた

体制設計では、法令対応の担当者を明示しておく必要があります。2024年4月から、厚生労働省の省令改正によりすべての労働契約の締結時・有期労働契約の更新時に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりました[1]。有期契約については更新上限の明示、無期転換申込権が発生する更新時の申込機会と転換後の労働条件の明示も追加されています。あわせて職業安定法関係でも、募集時等に明示すべき事項が追加されました[2]

追加された明示事項対象RACIでのAの推奨
就業場所・業務の「変更の範囲」すべての労働者管理部門責任者
更新上限の有無と内容有期契約労働者管理部門責任者
無期転換申込機会・転換後の労働条件無期転換申込権が発生する労働者管理部門責任者
従事すべき業務の変更の範囲 等労働者の募集時求人原稿のA(兼務担当)

つまり求人票の作成者と、労働条件通知書の作成者の双方に法令上の責任が発生しているということです。RACI表の4(求人原稿の作成)と15(労働条件通知書・入社手続き)のAを空欄にしないでください。

【回避策】

テンプレートが2024年3月以前のまま止まっている場合は、体制構築のステップ5(情報の集約)と同じタイミングで改訂してしまうのが効率的です。外部に委託する場合は、改正に対応した求人票・労働条件通知書のテンプレートを提供してもらえるかを条件に入れておくと、社内のチェック工数を減らせます。

よくある質問

Q1. 社員30名の会社ですが、採用担当を専任で置くべきですか?

A. 年間採用数が3名以下なら、専任は必要ありません。専任者を1名雇うと総額人件費で月約49万円かかり、さらに採用と育成に3〜6カ月を要します。社長が計画と最終決定を持ち、集客と事務を外部に出す「専任ゼロ型」で十分に回ります。年間採用数が安定して10名を超えたタイミングが、専任化を検討する目安です。※当社推計/業界相場目安

Q2. 兼務担当が採用に使える時間はどのくらいが限界ですか?

A. 月20時間が上限の目安です。これを超えると本業が圧迫され、担当者の離職リスクが上がります。Indeed調査でも、採用担当者の72.4%が他業務と兼務しており、従業員300名以下の企業では業務全体のうち採用に割けている時間が平均35.5%にとどまります。30時間を超えている場合は、委託範囲の拡大か専任化を検討してください。

Q3. RACI表はどのくらいの粒度で作ればいいですか?

A. 15項目前後が実用的です。項目を細かくしすぎると更新されなくなり、粗すぎると「誰がやるか」が曖昧なまま残ります。目安は「1項目が月1時間以上の工数を持つこと」。それ未満の業務は上位の項目にまとめてください。作成に3時間、以降は四半期に1回15分の更新で維持できます。

Q4. 採用体制の構築にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 専任者ゼロの状態から、おおむね12週間(3カ月)です。内訳は機能の棚卸し2週間、体制図1週間、RACI表2週間、運用ルール2週間、情報集約3週間、試験運用2週間です。急ぐ場合、情報集約は後回しにできますが、RACI表と運用ルールを飛ばすと体制が運用されません。外部委託を併用する場合、委託先の立ち上がりは2〜4週間が目安です。

Q5. 最終面接まで外部に任せることはできますか?

A. おすすめしません。一次面接までは評価基準を共有すれば委託可能ですが、最終面接と条件提示は自社の意思決定者が担うべき領域です。候補者から見て「誰が自分を採用したいのか」が見えないと、内定承諾率が下がります。RACI表でも12(最終面接)と13(条件提示)は社長または役員をA/Rに置く設計にしてください。

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参考資料

  1. 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
  2. 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
  3. 大学ジャーナルオンライン「採用面接に割ける時間は業務の2割未満 Indeedが採用担当者の業務実態を調査」(Indeed Japan調査、n=1,647) https://univ-journal.jp/137063/
  4. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html
  5. 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/
  6. リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』 https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20250220001/
  7. 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
  8. HRプロ「面接日程調整の“理想”は『当日~翌日』も、実態は『1~5日』」 https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=3687
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