採用担当者の負担は月90時間|業務20項目の工数一覧と外注で52時間戻る試算表

「採用担当者の負担が重い」とは言うものの、実際に何時間かかっているのかを数字で把握している企業は多くありません。Indeed Japanが採用実務従事者1,647名に行った調査では、採用担当者の72.4%が他業務と兼務しており、採用に割けている時間は業務全体の43.4%にとどまります[1]。負担を減らすには、まず「どの業務に何時間使っているか」を分解する必要があります。

本記事では採用業務を20項目に分解した月間工数の一覧表と、外注した場合に何時間戻るかの試算表を掲載しました。感覚ではなく数字で判断するための材料としてお使いください。

この記事でわかること

  • 採用業務20項目の月間工数一覧:年間5〜10名採用の中小企業モデルで月約90時間という内訳
  • 外注3パターンの削減時間試算:事務代行型で月23時間、母集団形成型で月52時間、選考まで型で月69時間
  • 負担が膨らむ5つの構造的原因:兼務・属人化・待ち時間など「忙しさの正体」の分解
  • コストゼロから始める負担軽減7つの打ち手と、委託すべき業務・残すべき業務の線引き

1. データで見る採用担当者の負担|72.4%が兼務、面接に使える時間は16.1%

まず、採用担当者が置かれている状況を客観的な数字で確認します。

調査項目数値出典
採用・人事以外の業務も兼務している割合72.4%Indeed Japan調査(n=1,647)
業務全体のうち採用に割けている時間43.4%同上
従業員300名以下の企業での同割合35.5%同上
採用フロー全体のうち面接にかけている時間16.1%同上
応募者と連絡が取れなくなる「ゴースティング」経験率74.9%同上
正社員が不足していると感じる企業の割合50.6%帝国データバンク(2026年4月)
採用予定数を充足できた企業の割合37.2%就職白書2025(2025年卒)

この数字の並びが示しているのは、採用担当者の負担が「量」だけでなく「配分」の問題でもあるということです[1]。採用の成否を最も左右する面接に使えている時間は全体の16.1%しかなく、残りの8割超は日程調整・書類のやりとり・媒体の管理といった周辺業務に消えています。

さらに、Indeedの同調査では採用業務の課題として「面接日程・方法の調整にコストがかかっている」が21.7%、「書類選考にコストがかかっている」が19.5%で3位・4位に挙がりました。上位2つ(求める人物像と異なる応募が多い41.9%、応募が増えない40.7%)が母集団の質・量の問題であることを踏まえると、負担の構造は「集められない」と「捌ききれない」の二重苦になっていることがわかります。

一方で、市場環境が緩んでいるわけではありません。厚生労働省の一般職業紹介状況によれば、2026年5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍、正社員有効求人倍率は0.99倍です[4]。帝国データバンクの調査では、2026年4月時点で正社員の人手不足を感じている企業が50.6%にのぼります[2]。採用をやめるという選択肢は事実上ありません。

なぜ負担が経営層に伝わらないのか

もう一つ、採用担当者を追い込んでいるのが「負担が可視化されていない」という問題です。営業なら売上、製造なら生産数という共通言語がありますが、採用業務は成果(採用人数)が出るまでのプロセスが外から見えません。結果として、次のようなすれ違いが起こります。

  • 経営層は「採用は募集をかければ応募が来るもの」と考えている
  • 実際には、応募1件を得るまでにスカウト30〜50通、原稿の改善が複数回必要になっている
  • 担当者は「忙しい」としか言えず、増員や外注の必要性が数字で示せない

このギャップを埋める唯一の方法が、工数の数値化です。「採用に月90時間かかっており、常勤換算で0.55人分に相当する」と示せれば、議論は感情論から資源配分の話に移ります。

【ここだけ押さえる】

「採用担当者が忙しい」のは能力や気合いの問題ではなく、兼務前提の体制で周辺業務が積み上がる構造の問題です。だからこそ、精神論ではなく工数の棚卸しから入る必要があります。次章で20項目に分解します。

2. 採用業務20項目の工数一覧|月あたり何時間かかっているか

以下は、年間5〜10名採用・常時2〜3ポジションを募集している中小企業をモデルにした、採用業務の月間工数の目安です。定型度は「マニュアル化しやすいか」、委託適性は「外部に出しやすいか」を3段階で示しています。

#業務項目月間工数の目安定型度委託適性
1採用計画・要員計画の策定2.0h
2求人要件の定義・現場とのすり合わせ3.0h
3求人媒体の選定・契約管理1.5h
4求人原稿の作成4.0h
5求人原稿の更新・改善3.0h
6スカウト候補者の抽出6.0h
7スカウト文面の作成3.0h
8スカウト送信8.0h
9スカウト返信への一次対応5.0h
10応募受付・書類の取りまとめ3.0h
11書類選考(スクリーニング)8.0h
12応募者への合否連絡4.0h
13面接日程の調整10.0h
14面接官のアサイン・社内調整3.0h
15面接前の資料準備2.0h
16面接の実施12.0h
17面接評価の集約・合議3.0h
18内定通知・条件提示2.0h
19内定者フォロー4.0h
20労働条件通知書の作成・入社手続き3.0h
合計89.5h/月

※当社推計/業界相場目安

月89.5時間は、週あたり約22時間、常勤換算で約0.55人分の工数です。兼務担当者がこれを抱えれば、他業務を圧迫するのは当然の帰結といえます。

工数の3大巨頭は「面接・日程調整・スカウト送信」

表を工数の多い順に並べ替えると、上位3つが浮かび上がります。

  1. 面接の実施(12.0h):これは削るべきではない業務です。採用の意思決定そのものであり、候補者の入社意欲を高める場でもあります。ここに時間を確保することが目的になります。
  2. 面接日程の調整(10.0h):候補者・面接官・会議室の3者を突き合わせる作業で、往復のメール回数が増えるほど膨らみます。定型度が高く、最も外に出しやすい業務です。
  3. スカウト送信(8.0h)/書類選考(8.0h):どちらも件数に比例して増える業務です。スカウトは定型度が高く委託適性◎、書類選考は評価基準の文書化ができていれば委託可能です。

日程調整の重さは他の調査でも裏づけられています。HRプロの調査では、面接日程調整の理想を「当日中」または「翌日中」と回答した企業が71.2%にのぼる一方、実際に要している期間は「1〜2日程度」が48.3%、「3〜5日程度」が29.7%でした[3]。理想と実態のギャップが、そのままゴースティング(連絡が取れなくなる現象)74.9%という数字につながっています。

【回避策】

工数の棚卸しは、記憶ではなく実測で行ってください。1週間だけ、カレンダーに「何の業務に何分使ったか」を15分単位で記録します。多くの企業で、体感の1.5〜2倍の時間が周辺業務に使われていることが判明します。この実測値がないまま外注を検討すると、削減効果を検証できません。

採用人数・職種別の工数早見表

前掲の89.5時間は「年間5〜10名採用・2〜3ポジション」のモデル値です。自社の規模に合わせて、次の係数で調整してください。

条件月間工数の目安モデル比
年間1〜3名採用/1ポジション約35〜45h0.4〜0.5倍
年間5〜10名採用/2〜3ポジション(モデル)約90h1.0倍
年間11〜20名採用/4〜5ポジション約140〜170h1.6〜1.9倍
専門職・エンジニア中心(同人数)モデル比+25〜40%
新卒採用を併走(説明会・インターン含む)モデル比+30〜50%

※当社推計/業界相場目安

専門職採用で工数が膨らむのは、候補者の絶対数が少ないためスカウトの抽出条件を細かく組み替える必要があり、返信率も下がるためです。同じ8時間のスカウト送信でも、送信対象を探す前工程に倍の時間がかかります。新卒採用が加わる場合は、説明会の企画・運営とインターンシップ対応がそのまま上乗せされます。

ひとり人事の状態で業務を抱えている場合の整理は、人事が一人で限界…ひとり人事の業務負担を減らす5つの具体策もあわせてご覧ください。

3. 負担が膨らむ5つの構造的原因|「忙しい」の正体を分解する

工数が積み上がるのには理由があります。原因を特定しないまま人を増やしても、同じ構造が再生産されるだけです。

#構造的原因何が起きているか増える工数の目安
兼務前提の体制総務・経理・営業事務と並行し、採用が常に後回しになる待ち時間で+10〜20%
要件定義の曖昧さ現場と人事の認識がずれ、書類選考と面接のやり直しが発生+8〜15h/月
意思決定の滞留決裁者が3名以上で合議に時間がかかり、候補者が離脱再募集で+20〜30h
属人化テンプレートも手順書もなく、担当者の頭の中だけに手順がある引き継ぎ時に+30h
媒体の増やしすぎ3媒体以上を並行運用し、管理と重複対応が発生+5〜12h/月

※当社推計/業界相場目安

② 要件定義の曖昧さが最も高くつく

5つのうち、最も費用対効果よく潰せるのが②要件定義の曖昧さです。Indeedの調査で採用課題の1位が「求める人物像と異なる人の応募が多い」(41.9%)だったことは、この問題が広く共有されていることを示しています[1]

要件が曖昧なまま募集を開始すると、次の順に工数が波及します。

  1. 母集団がずれる:求人原稿の訴求点が絞れず、想定外の層から応募が来ます。
  2. 書類選考が重くなる:判断に迷う応募者が増え、1件あたりの選考時間が2〜3倍になります。
  3. 面接でミスマッチが判明する:12時間かけた面接工数の一部が空振りに終わります。
  4. 現場から差し戻される:「思っていた人と違う」と言われ、要件定義からやり直しになります。

【回避策】

要件定義は「必須要件3つ・歓迎要件3つ・NG条件2つ」の8項目に絞って文書化してください。項目を増やすほど現場の合意が取れなくなります。8項目を1枚に収めることをルールにすると、議論が収束しやすくなります。

③ 意思決定の滞留は「日数」で管理する

決裁者が多い組織ほど、選考の各ステップで待ち時間が生まれます。対策はシンプルで、各ステップの上限日数をあらかじめ決めておくことです。「書類選考は受領から2営業日以内」「面接後の合否連絡は3営業日以内」といった形で社内合意を取り、超過したら自動的にリマインドが飛ぶ仕組みにします。

④属人化は「辞めるときに一括請求される負債」

属人化は、平時には問題が表面化しません。手順もテンプレートも担当者の頭の中にあるため、その人が回している限りは滞りなく進みます。問題は退職・異動のときに、蓄積した負債が一括で請求される点にあります。

引き継ぎに必要な情報を洗い出すと、おおむね次の8つになります。

  1. 媒体アカウント情報:ログインID、契約プラン、更新月、担当営業の連絡先
  2. スカウトの抽出条件:媒体ごとの検索条件、除外設定、送信ペース
  3. 文面テンプレート:スカウト・応募受付・合否連絡・日程案内など8種類
  4. 選考基準:必須要件・歓迎要件・NG条件と、過去の見送り理由の実例
  5. 面接官の情報:担当ポジション、対応可能な曜日・時間帯、評価の癖
  6. 社内の決裁ルート:誰の承認がどの段階で必要か
  7. 過去の応募データ:媒体別の応募数・通過率・採用単価
  8. 候補者との進行中のやりとり:現在選考中の候補者の状況

これらを整理せずに引き継ぐと、後任は同じ試行錯誤を最初からやり直すことになります。引き継ぎに要する時間の目安は約30時間、後任が元の水準まで立ち上がるには3〜6カ月が必要です。

【回避策】

属人化の解消に大掛かりな仕組みは要りません。上記8項目を1枚のドキュメントにまとめ、月1回だけ更新する運用で十分です。所要は初回2時間、以降は月15分程度。この投資で30時間の引き継ぎコストと数カ月の立ち上げ遅延を防げます。

採用リソースそのものが不足している場合の考え方は、採用リソース不足の解消法で詳しく整理しています。

4. 【試算表】外注でどれだけ時間が戻るか|3パターンの削減シミュレーション

第2章の20項目のうち、委託適性が高い業務を外に出した場合、月間工数がどう変わるかを3パターンで試算しました。

パターン委託する業務項目削減工数/月自社に残る工数費用の目安
A:事務代行型⑩応募受付/⑫合否連絡/⑬日程調整/⑭面接官調整/⑳入社手続き23.0h66.5h月8万〜20万円
B:母集団形成型Aに加えて④原稿作成/⑤原稿更新/⑥候補者抽出/⑦文面作成/⑧スカウト送信/⑨返信一次対応52.0h37.5h月25万〜45万円
C:選考まで型Bに加えて⑪書類選考/⑯一次面接の一部/⑰評価集約69.0h20.5h月40万〜80万円

※当社推計/業界相場目安

パターン別の向き・不向き

A:事務代行型(月23時間削減)は、最初の一歩として最も導入しやすい形です。定型度が高い業務だけを切り出すため引き継ぎコストが小さく、1〜2週間で立ち上がります。日程調整のスピードが上がることで、ゴースティングの発生率そのものが下がるという副次効果も期待できます。採用担当者が完全に兼務で、まず息をつきたいという企業に向いています。

B:母集団形成型(月52時間削減)は、応募が集まらないことが最大の課題である企業向けです。スカウト運用と求人原稿の改善をまとめて外に出すため、月89.5時間が37.5時間まで減り、面接と要件定義に集中できる状態になります。第2章のデータでいえば、面接に使える時間の割合が16.1%から40%前後まで上がる計算です。

C:選考まで型(月69時間削減)は、複数ポジションを同時に走らせている企業向けです。ただし書類選考を委託する前提として、評価基準の文書化が不可欠です。基準がないまま出すと精度が落ち、結局すべて自社で見直すことになります。

【注意点】

削減工数はあくまで「自社の手から離れる時間」であり、ゼロになるわけではありません。 委託先とのやりとり(週次定例30分、確認依頼への回答など)に月3〜6時間程度は必要です。試算する際は、削減工数から管理工数を差し引いた実質削減時間で見てください。パターンBなら52時間−5時間=実質47時間が目安です。

5. 費用対効果で見る|1時間を取り戻すコストはいくらか

削減時間がわかったら、次は金額に換算します。判断軸は「支払額1万円あたり、何時間の工数が空いたか」です。

採用担当者の時間単価を出す

項目計算金額
想定年収450万円
総額人件費(社会保険料等込み・年収の約1.3倍)450万円 × 1.3585万円
年間労働時間8時間 × 225日1,800時間
時間単価585万円 ÷ 1,800時間約3,250円

※当社推計/業界相場目安

この単価で3パターンを換算すると、次のようになります。

パターン削減工数人件費換算委託費の目安1万円あたり削減時間
A:事務代行型23.0h約74,750円月8万〜20万円1.2〜2.9時間
B:母集団形成型52.0h約169,000円月25万〜45万円1.2〜2.1時間
C:選考まで型69.0h約224,250円月40万〜80万円0.9〜1.7時間

※当社推計/業界相場目安

正直に書くと、人件費換算だけで見れば委託費のほうが高くなるケースが多いです。ここで判断を止めてしまうと「外注は割高」という結論になります。しかし、この計算には2つの要素が入っていません。

1つ目は、空いた時間で何をするかです。 面接に使える時間が16.1%から40%に増えれば、候補者の見極め精度と入社意欲の醸成が変わります。就職白書2025によれば、2025年卒採用で「採用予定数を充足できた」企業は37.2%にとどまります[5]。裏を返せば約6割が未充足であり、1名採用できないことによる機会損失は、多くの場合で月数十万円の委託費を上回ります。

2つ目は、専門性の差です。 スカウト文面の改善や媒体ごとの運用ノウハウは、月数時間しか触れない兼務担当者と、毎日運用している専門チームとでは成果が変わります。同じ8時間のスカウト送信でも、返信率が2倍違えば実質的な生産性は2倍です。

【ここだけ押さえる】

費用対効果の判断式は「削減工数 × 時間単価」ではなく、「削減工数 × 時間単価 + 採用成功率の改善による機会損失の回避額」で見てください。前者だけで判断すると、ほぼすべての外注が割高に見えます。

採用業務の棚卸しと削減工数の試算は、無料でご相談いただけます。

6. コストゼロから始める負担軽減7つの打ち手

外注を検討する前に、自社で今すぐ手をつけられる打ち手もあります。効果が出やすい順に7つ挙げます。

  1. 【日程調整】候補日を3つ以上まとめて提示する:往復回数が平均4回から2回に減ります。面接官のカレンダーを事前に押さえておくのがコツです。削減目安は月3〜5時間。
  2. 【返信テンプレート】連絡文面を8種類作り置きする:応募受付・書類通過・見送り・日程案内・リマインド・辞退受領・内定通知・入社案内の8つで、日常のやりとりの9割をカバーできます。削減目安は月2〜4時間。
  3. 【評価基準】必須3・歓迎3・NG2の8項目に絞る:書類選考の1件あたり時間が短縮され、現場との差し戻しも減ります。削減目安は月3〜6時間。
  4. 【上限日数】各選考ステップの返答期限を決める:書類2営業日、面接後3営業日など。滞留による再フォローの工数が減ります。
  5. 【媒体の集約】使う媒体を2つ以下に絞る:応募単価の悪い媒体を止めるだけで、管理工数が月5〜12時間減るケースがあります。
  6. 【面接の構造化】質問項目を固定する:面接官による評価のばらつきが減り、評価集約の合議時間が短縮されます。
  7. 【記録の外部化】手順を1枚のドキュメントにまとめる:属人化を解消し、担当交代時の引き継ぎ工数(約30時間)を圧縮できます。

7つの打ち手の効果とコストを一覧で比較する

#打ち手削減工数/月準備にかかる時間費用
1候補日を3つ以上まとめて提示3〜5h0.5h0円
2返信テンプレート8種類の作り置き2〜4h3h0円
3評価基準を必須3・歓迎3・NG2に絞る3〜6h2h0円
4各選考ステップの返答期限を設定2〜4h1h0円
5使用媒体を2つ以下に集約5〜12h2h削減(媒体費減)
6面接の質問項目を固定(構造化)2〜3h4h0円
7手順を1枚のドキュメントに集約引き継ぎ時30h2h0円
合計月17〜34h14.5h0円

※当社推計/業界相場目安

準備に合計14.5時間を投じれば、月17〜34時間が戻る計算です。初月で投資を回収し、翌月以降は純粋な削減になります。 第4章のパターンA(月23時間削減・月8万〜20万円)と比べると、自助努力だけでも同等の削減が可能であることがわかります。

ただし、自助努力には限界もあります。1〜7はいずれも「今ある業務を速くする」施策であり、応募が集まらないという課題そのものは解決しません。スカウトの返信率や求人原稿の訴求力を上げるには、媒体ごとの運用ノウハウが必要です。ここが外注を検討する分岐点になります。

【回避策】

7つを同時に始めないでください。1〜3の3つだけを2週間やってみて、削減時間を実測します。効果が数字で見えると社内の合意も取りやすくなり、次の打ち手や外注の検討がスムーズに進みます。

採用に手が回らない状態からの立ち上げ方は、採用に手が回らない中小企業が今すぐできることでも解説しています。

7. 委託すべき業務・残すべき業務の線引き

負担軽減のために外注を検討する場合、何を出して何を残すかの判断軸が必要です。判断軸は「定型度」と「自社の意思決定に関わるか」の2軸です。

判定該当する業務理由
積極的に委託日程調整、応募受付、合否連絡、スカウト送信、返信一次対応、原稿作成・更新定型度が高く、自社の意思決定を含まない
条件付きで委託書類選考、面接前資料準備、媒体管理、入社手続き評価基準や手順の文書化が前提
自社に残す要件定義、面接の実施、合否の最終判断、内定者フォロー、採用計画事業判断・カルチャー伝達に直結する

【注意点】

「面接まで全部お願いしたい」という発注は、初回では避けたほうが無難です。面接は候補者が自社を評価する場でもあり、代行者では伝えきれない情報があります。一次面接を委託する場合でも、二次以降は必ず自社の意思決定者が出る設計にしてください。

なお、委託先に業務を出す際は、自社の担当者が代行スタッフへ直接作業指示を出さないことが原則です。指示は委託先の窓口担当者経由に集約してください。契約形態が業務委託である以上、指揮命令系統の整理は発注側の責任範囲になります。

委託開始から効果が出るまでの4段階

外注は発注した翌日から効果が出るわけではありません。立ち上がりの見通しを持っておくと、社内への説明もしやすくなります。

  1. 【1〜2週目】情報の引き渡し:評価基準、テンプレート、媒体アカウント、面接官の稼働可能時間を共有します。この期間は自社の工数がむしろ一時的に増えます(+5〜10時間)。
  2. 【3〜4週目】試験運用と微調整:委託先の対応内容を確認し、トーンや判断基準をすり合わせます。削減効果は想定の5〜6割程度です。
  3. 【2カ月目】安定稼働:やりとりの型が固まり、想定の8〜9割の削減効果が出ます。管理工数は月3〜6時間に落ち着きます。
  4. 【3カ月目以降】改善フェーズ:蓄積したデータをもとに、スカウト条件や原稿の改善提案が出てくる段階です。削減効果に加えて成果指標の改善が見え始めます。

【注意点】

1カ月目の数字だけで判断しないでください。立ち上げ期は自社の工数が一時的に増えるため、「外注したのに楽になっていない」という印象を持ちがちです。評価は3カ月目の実績で行うと、社内で合意しておくことをおすすめします。

8. 2024年4月の法改正で増えた「見えない負担」

工数の話をするうえで見落とされがちなのが、法改正への対応負担です。2024年4月から、厚生労働省の省令改正によりすべての労働契約の締結時・有期労働契約の更新時に、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりました[6]。有期契約については更新上限の明示、無期転換申込権が発生する更新時の申込機会と転換後の労働条件の明示も追加されています。

追加された明示事項対象実務への影響
就業場所・業務の「変更の範囲」すべての労働者労働条件通知書テンプレートの改訂
更新上限の有無と内容有期契約労働者契約更新フローの見直し
無期転換申込機会・転換後の労働条件無期転換申込権が発生する労働者通知タイミングの管理

これは第2章の表でいえば⑳労働条件通知書の作成・入社手続き(月3.0時間)に直結する変更です。テンプレートが2024年3月以前のまま止まっている企業は、改訂作業そのものに数時間から十数時間を要します。

【ここだけ押さえる】

法改正対応は「一度やれば終わり」の作業ですが、放置すると採用のたびにリスクが積み上がります。テンプレート改訂は工数棚卸しと同じタイミングで済ませてしまうのが効率的です。採用代行を利用する場合は、改正に対応した労働条件通知書・求人票のテンプレートを提供してもらえるかを確認しておくと、社内のチェック工数を減らせます。

よくある質問

Q1. 採用担当者の負担は、実際どのくらいが「多すぎる」水準ですか?

A. 明確な基準はありませんが、兼務担当者で月60時間を超えると他業務への影響が出始めるというのが実務上の目安です。本記事のモデル(年間5〜10名採用)では月89.5時間となり、常勤換算で0.55人分に相当します。まずは1週間の実測で自社の数字を出し、担当者の総労働時間に占める割合を確認してください。※当社推計/業界相場目安

Q2. 人を1人採用するのと、外注するのはどちらが得ですか?

A. 比較すべきは金額だけではありません。採用担当者を1名雇用する場合、年収450万円なら総額人件費で年585万円(月約49万円)かかり、さらに採用と育成に3〜6カ月を要します。一方、外注は月8万〜80万円で翌月から稼働します。立ち上がりの速さと固定費化しない点が外注の利点ですが、ノウハウが社内に蓄積しにくいという面もあります。年間の採用数が安定して10名を超えるなら専任者の採用、変動が大きいなら外注、という判断が一般的です。

Q3. どの業務から外注すれば効果が出やすいですか?

A. 面接日程の調整(月10時間)と応募者への合否連絡(月4時間)からをおすすめします。定型度が高く引き継ぎコストが小さいうえ、候補者への返信速度が上がることで選考辞退の抑制にもつながります。HRプロの調査では、日程調整に3〜5日を要している企業が29.7%にのぼり、理想(当日〜翌日)とのギャップが大きい領域です[3]

Q4. 外注しても結局こちらの確認工数が増えませんか?

A. 管理工数はゼロにはなりません。週次定例30分+確認依頼への回答で、月3〜6時間程度を見込んでおいてください。ただしこの工数は、①評価基準を事前に文書化する、②連絡窓口を1本に絞る、③レポート項目を最初に合意する、の3点で大きく圧縮できます。逆にこの準備を飛ばすと、確認のやりとりが増えて削減効果が目減りします。

Q5. 採用担当者が退職しそうです。何から手をつけるべきですか?

A. まず手順の文書化を最優先してください。求人媒体のログイン情報、スカウトの抽出条件、テンプレート文面、選考基準、面接官の連絡先を1枚のドキュメントにまとめます。属人化した状態での引き継ぎには約30時間が必要になるケースがあり、これが後任の初期負担になります。並行して、定型業務の外部委託を検討しておくと、担当不在の期間でも採用活動を止めずに済みます。

関連する公開記事

採用担当者の負担でお悩みなら、おまかせ採用にご相談ください

「工数は把握できたが、どこから外に出すべきか判断がつかない」——ここから先は、採用人数・職種・現在の体制によって最適解が変わります。おまかせ採用では、採用業務の棚卸しから委託範囲の設計、削減工数の試算までご支援可能です。

日程調整や応募者対応といった事務領域の部分委託から、スカウト運用を含む母集団形成、選考代行まで、必要な範囲だけを切り出してご提案します。まずは現状の工数を一緒に整理するところからでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

参考資料

  1. 大学ジャーナルオンライン「採用面接に割ける時間は業務の2割未満 Indeedが採用担当者の業務実態を調査」(Indeed Japan調査、n=1,647) https://univ-journal.jp/137063/
  2. 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/
  3. HRプロ「面接日程調整の“理想”は『当日~翌日』も、実態は『1~5日』」 https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=3687
  4. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html
  5. リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』 https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20250220001/
  6. 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
NEWS

採用お役立ち・ウェビナー情報

  • HOME
  • 採用ノウハウ
  • 採用担当者の負担は月90時間|業務20項目の工数一覧と外注で52時間戻る試算表
PAGE TOP