採用代行を業務委託する相場は月10万〜80万円|委託範囲別7パターン料金表と契約7つの注意点

「採用代行を業務委託で頼みたいが、相場がわからない」——中小企業の採用担当者から最も多く寄せられる質問のひとつです。検索すると「月額10万円〜」「月額80万円」と幅の広い数字が並び、自社がどのゾーンに当てはまるのか判断できません。理由は単純で、採用代行の料金は「何を・どこまで・どんな契約形態で」任せるかによって決まるからです。

本記事では業務委託契約という切り口から、委託範囲別7パターンの相場表、料金体系4タイプの比較、見積書の内訳チェック項目を整理しました。あわせて、業務委託だからこそ確認が必要な37号告示・職業安定法・フリーランス新法の論点も解説します。

この記事でわかること

  • 委託範囲別の業務委託相場:スポット1件1万円〜、部分委託は月10万〜30万円、フル委託は月40万〜80万円という7パターンの料金表
  • 料金体系4タイプの違い:月額固定・従量課金・成果報酬・スポットのどれが自社に合うか
  • 見積書の内訳チェック7項目:同じ「スカウト代行」でも金額が3倍変わる5つの変動要因
  • 業務委託契約の法的注意点:37号告示(偽装請負)・職業安定法36条(委託募集)・フリーランス新法という3つの確認ポイント

1. 採用代行の「業務委託」とは?派遣・人材紹介との3つの違い

採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)を外部に任せるとき、契約形態は大きく3つに分かれます。業務委託(準委任・請負)/労働者派遣/有料職業紹介です。この3つを混同したまま見積もりを比較すると、金額の大小だけを見て判断してしまい、あとから「頼めると思っていた業務が契約範囲外だった」という事態になります。

業務委託とは、発注者が受託者に「業務の遂行」または「成果物の完成」を委ねる契約です。最大の特徴は、発注者が受託者のスタッフに直接指揮命令をしないという点にあります。厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(通称37号告示)では、労働者派遣にあたるか請負にあたるかは契約書の名称ではなく実態に即して判断されるとされています[2]。つまり「業務委託契約書」を交わしていても、実態として自社の担当者が代行会社のスタッフへ日々の作業指示を出していれば、偽装請負と判断されるリスクがあるということです。

一方の有料職業紹介は、求人企業と求職者の間の雇用関係成立をあっせんする事業で、厚生労働大臣の許可が必須です。採用代行会社が候補者を「推薦」し、その紹介に対して報酬を受け取る形になると職業紹介に該当し得ます。ここは業務委託契約の範囲設計で最も注意すべき境界線です。

契約形態3種の比較

比較軸業務委託(準委任・請負)労働者派遣有料職業紹介
指揮命令受託会社が行う(発注者は不可)派遣先=自社が行う該当なし
必要な許可原則不要(※委託募集は職安法36条の許可)労働者派遣事業許可有料職業紹介事業許可
費用の性質業務・成果への対価稼働時間への対価採用成立への成功報酬
料金目安月10万〜80万円時給2,000〜3,500円相当理論年収の30〜35%
向いているケース業務プロセスごと外に出したい席を用意して手を増やしたい母集団そのものが欲しい
成果の測り方業務量・KPI・レポート稼働時間入社人数

※当社推計/業界相場目安

【ここだけ押さえる】

業務委託は「時間を買う」のではなく「業務プロセスを買う」契約です。したがって見積書は必ず業務項目単位で書かれているかを確認してください。「人月」「常駐」といった単位だけで書かれた見積書は、実態が派遣に近く、37号告示の観点でグレーになりやすい構造です。

採用代行と人材紹介の費用構造の違いをより詳しく知りたい方は、人材紹介と採用代行の費用比較もあわせてご覧ください。

2. 【委託範囲別】採用代行を業務委託した場合の相場一覧|7パターン料金表

「採用代行の相場は月いくらか」という問いに一つの数字で答えられないのは、委託範囲が企業ごとに違うためです。BOXILが利用企業342人に行った調査では、採用代行の月額費用の最多層は10万円〜20万円という結果が出ています[6]。一方でdodaの解説では、採用業務全般を任せる場合は月額40万円からが目安とされています[7]。この2つは矛盾ではなく、「多くの企業は部分委託から始めている」という実態を示しています。

以下は、業務委託で発注する場合の委託範囲別の相場を7パターンに分解した表です。

#委託範囲月額相場の目安想定削減工数/月最低契約期間の目安
求人媒体の原稿作成・更新代行月5万〜15万円8〜15時間1〜3カ月
スカウト送信代行(1媒体)月10万〜25万円20〜40時間3カ月
応募者対応・面接日程調整月8万〜20万円15〜30時間3カ月
書類選考代行(スクリーニング)月10万〜25万円10〜25時間3カ月
一次面接代行1件1万〜2万円/月15万〜30万円10〜20時間3カ月
採用戦略・KPI設計・要件定義月15万〜40万円5〜15時間3〜6カ月
フル委託(①〜⑥を一括)月40万〜80万円60〜120時間6カ月

※当社推計/業界相場目安

表を縦に見ると、部分委託(①〜⑤のいずれか1〜2つ)で月10万〜30万円、フル委託で月40万〜80万円というレンジが浮かび上がります。専門職・エンジニア採用など難易度の高い領域では、月100万円を超えるケースもあります。

7パターンの中身を1つずつ見る

金額だけを並べても実感が湧かないため、それぞれ「何をどこまでやってもらえるのか」を補足します。

① 求人媒体の原稿作成・更新代行(月5万〜15万円)は、最も導入ハードルの低い入口です。求人票の構成設計、訴求文の執筆、写真の選定指示、月1〜2回のリライトまでが一般的な範囲です。原稿は一度作って終わりではなく、応募数を見ながら見出しや給与レンジの見せ方を調整する運用が前提になります。

② スカウト送信代行(月10万〜25万円)は、候補者の抽出条件の設計、文面テンプレートの作成(3〜5パターン)、月100〜300通の送信、返信への一次対応までが標準です。媒体を2つ以上またぐ場合は、1媒体あたり月5万〜10万円が加算されるイメージで見積もると実態に近くなります。スカウト文面の質で返信率は数倍変わるため、テンプレートの改善提案が範囲に入っているかを確認してください。

③ 応募者対応・面接日程調整代行(月8万〜20万円)は、応募受付から候補者への連絡、面接官カレンダーとの調整、リマインド送信、当日の欠席フォローまでを含みます。工数削減の効果が最もわかりやすい領域で、月15〜30時間の削減が見込めます。

④ 書類選考代行(月10万〜25万円)は、評価基準に沿ったスクリーニングと、見送り/通過の理由付けまでが範囲です。ここは委託前の準備が成否を分けます。必須要件・歓迎要件・NG条件を文書化していない状態で発注すると、精度が上がらないまま費用だけが発生します。

⑤ 一次面接代行(1件1万〜2万円)は、面接実施と評価シートの提出がセットです。月15件なら15万〜30万円という計算になります。自社の魅力づけまで任せたい場合は、事前のインプット(事業説明・カルチャー資料)にどれだけ時間を割けるかで結果が変わります。

⑥ 採用戦略・KPI設計・要件定義(月15万〜40万円)は、採用計画の逆算、ペルソナ設計、KPIツリーの作成、月次の振り返り会議への参加が中心です。作業代行ではなく伴走支援に近く、社内に採用の知見を残したい企業に向いています。

⑦ フル委託(月40万〜80万円)は、①〜⑥を一括で任せる形です。窓口が1本にまとまるぶん社内の管理コストは下がりますが、成果指標を握れていないと「何にいくら払っているか」が見えなくなります。KPIの合意を契約前に済ませておくことが前提条件です。

委託範囲を決める順番

多くの企業が最初につまずくのは「どこから任せるか」の判断です。おすすめは、時間を食っているのに成果への寄与が薄い業務から切り出す順番です。

  1. 日程調整・応募者対応から着手する:定型度が高く、引き継ぎコストが最も低い領域です。候補者体験への影響が大きい割に、社内でやっても差別化になりません。
  2. 次にスカウト送信を移す:文面テンプレートと送信対象条件さえ固まれば、月20〜40時間規模の工数がまるごと外に出ます。
  3. 書類選考は評価基準を言語化してから:基準が曖昧なまま委託すると精度が落ちます。「見送り理由」の型を3〜5個決めてから発注してください。
  4. 戦略・要件定義は最後:ここは自社の意思決定そのものです。伴走型の設計支援として月次で入ってもらう形が現実的です。

【回避策】

「全部まとめてお願いしたい」という発注の仕方は、初回契約では避けたほうが無難です。フル委託は月40万〜80万円と金額が跳ね上がるうえ、成果指標が曖昧なまま走り出すと契約更新時に費用対効果を検証できません。まず1〜2業務を3カ月、そこで削減工数と歩留まりの変化を測ってから範囲を広げる進め方が、結果的に総コストを抑えます。

なお、委託範囲を広げるかどうかの判断は、契約更新のタイミング(3カ月目・6カ月目)にまとめて行うと、比較の基準がぶれずに済みます。

3. 料金体系4タイプ別の相場と選び方|月額固定・従量課金・成果報酬・スポット

業務委託の見積もりは、料金体系によって同じ業務でも見え方が変わります。主要な4タイプの特徴を整理します。

料金体系相場の目安費用が読めるかメリット注意点
月額固定型月10万〜80万円◎(毎月一定)予算計画が立てやすい/継続的な改善が乗る採用が止まった月も同額発生
従量課金型スカウト1通200〜500円、日程調整1件2,000〜4,000円△(変動大)動いた分だけ支払う繁忙期に上振れしやすい
成果報酬型採用1名60万〜120万円/理論年収の20〜35%×(成立次第)採用できなければ費用ゼロ職業紹介許可の有無を要確認
スポット型1業務3万〜20万円◎(都度見積)単発の繁忙対応に最適ノウハウが社内に残りにくい

※当社推計/業界相場目安

どのタイプを選ぶべきか

月額固定型が向いているのは、通年で複数ポジションを募集している企業です。採用活動には「今月は応募ゼロ、来月は20件」という波がありますが、月額固定なら予算がぶれません。中小企業で年間採用数が3〜10名程度なら、月10万〜30万円の部分委託×月額固定が最もコントロールしやすい形です。

従量課金型が向いているのは、業務量の見通しが立っている企業です。たとえば「今期はスカウトを月300通送る」と決まっているなら、1通あたり単価×通数で総額が計算できます。逆に読めない場合は、上限キャップ(月○円まで)を契約書に入れておくと安全です。

成果報酬型を検討する際は、契約相手が有料職業紹介事業の許可を持っているかを必ず確認してください。 候補者の推薦・あっせんに対して成功報酬を受け取る形は職業紹介に該当し得ます。無許可で有料の職業紹介事業を行った場合、職業安定法上の罰則対象となります。「採用代行だから許可は不要」という説明を鵜呑みにせず、許可番号(13-ユ-○○○○○○の形式)の提示を求めるのが確実です。

スポット型が向いているのは、繁忙期だけ手が足りない企業です。新卒の説明会シーズンや、特定ポジションの急募など、期間限定の山を越える用途に適しています。

月額プランの具体的な内訳については、採用代行の月額費用はいくら?料金相場・プランで詳しく解説しています。

4. 見積書のどこを見るか|費用が3倍変わる5つの変動要因と内訳チェック7項目

同じ「スカウト代行 月20万円」でも、中身はまったく違います。相場表を眺めるだけでは判断を誤るため、見積書の読み方を押さえておきましょう。

費用が変わる5つの変動要因

変動要因費用が上がる条件費用が下がる条件影響度の目安
対象職種の難易度エンジニア・専門職・有資格者事務・販売・オペレーター±30〜100%
委託する媒体数3媒体以上を横断運用1媒体に集中+20〜60%
稼働の即時性当日返信・土日対応あり翌営業日返信+15〜40%
レポート粒度週次・候補者単位の分析付き月次サマリーのみ+10〜30%
契約期間単月・スポット6カ月以上の継続±10〜25%

※当社推計/業界相場目安

対象職種の影響が最も大きい点に注目してください。厚生労働省の一般職業紹介状況によれば、2026年5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍、正社員有効求人倍率は0.99倍です[4]。全体の数字は落ち着いて見えても、職種別に見れば依然として採用難易度の差は大きく、その差がそのまま代行費用に反映されます。

見積書の内訳チェック7項目

  1. 業務項目が動詞で書かれているか:「スカウト運用一式」ではなく「候補者抽出/文面作成/送信/返信一次対応」と分解されているか。範囲外業務の追加請求を防ぎます。
  2. 月次の想定業務量が数字で入っているか:「スカウト送信 月200通まで」「日程調整 月40件まで」。上限を超えた場合の単価も併記されているのが理想です。
  3. 初期費用(オンボーディング費)の有無:10万〜30万円が発生するケースがあります。3カ月契約だと月額換算で3〜10万円上乗せになる計算です。
  4. 最低契約期間と中途解約条項:3カ月/6カ月の縛りが一般的です。解約予告期間が30日か60日かで、実質的な最低支払額が変わります。
  5. 担当体制(何名・何時間):専任か兼任か、ディレクターがつくか。ここが不明瞭な見積書は、実務品質が読めません。
  6. レポートの提出頻度と項目:週次か月次か、KPI(送信数・返信率・書類通過率)が定義されているか。
  7. 成果報酬部分の有無と法的根拠:成功報酬が含まれる場合、有料職業紹介事業許可番号を確認してください。

【注意点】

見積書に「実費別途」とだけ書かれている場合、求人媒体の掲載料・スカウト送信権の購入費・適性検査費用などが後から加算されます。媒体費を含むのか含まないのかは、金額が数十万円単位で変わる項目です。総額比較のときは必ず条件を揃えてください。

相場より高くなるケース・安くなるケース

同じ委託範囲でも、次の条件に当てはまる企業は相場より高い見積もりが出やすくなります。

  • 募集ポジションが5職種以上に分かれている:職種ごとに要件定義とスカウト条件を作り直す必要があり、実質的に別案件が並走する構造になります。目安として+20〜40%。
  • 選考フローが4段階以上ある:日程調整の回数が増え、候補者の離脱フォローも複層化します。
  • 採用の意思決定者が3名以上いる:合議に時間がかかり、代行側の待ち時間がコストに転嫁されます。
  • 地方拠点・複数エリアの同時募集:媒体の使い分けと商圏ごとの訴求調整が発生します。

反対に、次の条件がそろっている企業は相場の下限に近づきます。

  • 1〜2職種に絞って通年で募集している:テンプレートと運用が固まり、月あたりの実作業が安定します。
  • 求める人物像が文書化されている:要件定義のすり合わせ工数が減り、初月から精度が出ます。
  • 6カ月以上の継続契約を前提にできる:立ち上げコストを長期で按分でき、月額を10〜25%抑えられるケースがあります。
  • 選考の一次判断を自社で即日返せる:候補者の滞留が減り、フォロー工数そのものが小さくなります。

※当社推計/業界相場目安

委託範囲と見積もりの妥当性について、貴社の状況に合わせてご相談を承っています。

5. 業務委託契約で必ず押さえる法的3チェック|37号告示・委託募集・フリーランス新法

採用代行を業務委託する際、費用と同じくらい重要なのが契約の適法性です。ここを外すと、費用を払ったうえに行政指導のリスクを負うことになります。押さえるべきは3点です。

チェック項目根拠何を確認するか抵触したときのリスク
偽装請負にならないか37号告示(昭和61年労働省告示第37号)自社が代行スタッフへ直接指示していないか労働者派遣法・職業安定法違反として指導・是正
委託募集に該当しないか職業安定法36条報酬を得て自社の代わりに「募集」を行っていないか無許可の委託募集として指導対象
フリーランス新法の義務フリーランス・事業者間取引適正化等法(2024年11月1日施行)従業員を使用しない個人へ委託していないか取引条件明示義務違反等で行政指導・罰金

① 偽装請負(37号告示)

厚生労働省は37号告示の疑義応答集で、労働者派遣か請負かは契約の形式ではなく実態に即して判断すると明示しています[2]。採用代行の現場で危ないのは、たとえば次のような運用です。

  • 自社のSlackチャンネルに代行スタッフを入れ、日々の作業指示を直接投げている
  • 自社オフィスに常駐させ、勤務時間や休憩時間を自社が管理している
  • 代行会社の管理者を介さず、個々のスタッフに業務量の増減を指示している

【回避策】

指示は必ず代行会社の窓口担当者(ディレクター)経由にまとめてください。連絡チャネルを1本に絞り、依頼は「業務単位・成果単位」で出す。日々の細かな作業配分は代行会社側の裁量に委ねる。この3点を守るだけで、実態上のリスクは大きく下がります。

② 委託募集(職業安定法36条)

自社の従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集を行わせる場合、職業安定法36条により厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可が必要になります。ここで境界になるのは「募集」に当たるかどうかです。

  • 許可が不要になりやすい業務:面接日程の調整、応募者への事務連絡、媒体への原稿入稿作業など、採否判断や勧誘に直接関与しない業務
  • 確認が必要な業務:候補者への応募勧奨、スカウトDMの送信、候補者の推薦、採否に近い判断を伴う選考

判断は個別具体的になるため、スカウト代行や選考代行を含む契約を結ぶ際は、受託側がどの許認可を持っているかを書面で確認してください。

③ フリーランス新法

2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法により、従業員を使用しない個人事業主へ業務委託する発注事業者には、取引条件の書面等による明示義務報酬支払期日の設定義務6カ月以上の契約を中途解除する場合の30日前予告義務などが課されています[3]。命令違反や検査拒否があった場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。

採用代行は個人のフリーランス人事に委託するケースも多い領域です。「個人に頼むほうが安い」という理由だけで選ぶと、法対応の手間がむしろ増える場合があります。個人事業主への委託を検討している場合は、採用代行は個人事業主・フリーランスに頼める?もご確認ください。

6. 2024年4月の労働条件明示改正で「求人票の書き方」まで委託範囲に入った理由

業務委託の範囲を考えるとき、見落とされがちなのが法改正対応です。2024年4月から、厚生労働省の省令改正によりすべての労働契約の締結時・有期労働契約の更新時に、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりました[1]。加えて、有期契約については更新上限の明示、無期転換申込権が発生する更新時の申込機会・転換後の労働条件の明示も追加されています。

さらに、同じ2024年4月から職業安定法関係でも、募集時等に明示すべき事項が追加されました[8]。求人票・求人媒体の掲載内容そのものが法改正の対象になったということです。

改正のタイミング追加された明示事項採用実務への影響
労働契約の締結時(全労働者)就業場所・業務の「変更の範囲」労働条件通知書のテンプレート改訂が必要
有期労働契約の締結・更新時更新上限の有無と内容契約更新フローの見直し
無期転換申込権が発生する更新時申込機会・転換後の労働条件通知タイミングの管理が必要
労働者の募集時等従事すべき業務の変更の範囲 等求人票・媒体原稿の記載見直し

【ここだけ押さえる】

求人票の記載は「集客のためのコピー」であると同時に「法令上の明示事項」でもあります。テンプレートが2024年3月以前のまま止まっている場合は、原稿の作り直しが必要です。採用代行を業務委託する際は、法改正に対応した求人票テンプレートを提供してもらえるかを委託範囲の条件に入れておくと、社内のチェック工数を減らせます。

この観点は、月5万〜15万円で依頼できる「求人原稿作成・更新代行」の価値を大きく変えました。単なる文章の代筆ではなく、法令チェックを含むアウトプットとして捉えると、費用対効果の見え方が変わります。

7. 相場から自社の適正予算を逆算する|採用単価ベースの計算式

相場表を見ても「うちはいくらまで出していいのか」がわからない、という声をよく伺います。判断軸として使いやすいのが、採用単価(1人あたり採用コスト)からの逆算です。

計算式はシンプルです。

【適正予算の算出式】

年間の採用代行予算 = 目標採用人数 × 許容採用単価 × 代行費比率(30〜50%)

月額換算 = 年間予算 ÷ 稼働月数

具体例:年間5名採用・許容採用単価60万円の場合

項目計算金額
年間の許容採用コスト総額5名 × 60万円300万円
うち媒体費・広告費(50〜70%)300万円 × 60%180万円
うち代行費に回せる額(30〜50%)300万円 × 40%120万円
稼働12カ月で割った月額上限120万円 ÷ 12カ月月10万円
稼働6カ月に集中させた場合120万円 ÷ 6カ月月20万円

※当社推計/業界相場目安

この例では、月10万〜20万円が上限ゾーンになります。表2に照らすと、②スカウト送信代行または③応募者対応・日程調整代行の単独委託が現実的な選択です。フル委託(月40万〜80万円)は予算に合わないため、まず1業務から始めて成果を見る、という判断になります。

なお、リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』によれば、2025年卒採用で「採用予定数を充足できた」企業は37.2%にとどまります[5]。裏を返せば約6割の企業が未充足であり、採用単価を抑えることよりも「採用できないことによる機会損失」のほうが大きい局面も少なくありません。予算の上限を決めるときは、1名採用できなかった場合の売上・稼働への影響も併せて試算しておくことをおすすめします。

【注意点】

「相場より安いから」という理由だけで発注先を選ぶと、月額は下がっても社内の確認工数が増え、トータルの負荷が変わらないケースがあります。判断軸は月額単価ではなく、削減できた自社工数 ÷ 支払額(1万円あたり何時間空いたか)で見てください。月20万円で月40時間空けば、1時間あたり5,000円の換算です。

8. 発注から立ち上がりまでの6ステップ|失敗パターンとあわせて

最後に、業務委託で採用代行を導入する際の実務手順を整理します。立ち上がりまでの目安は2〜6週間です。

  1. 【現状棚卸し】採用業務を20項目に分解して時間を測る:1週間、実際にかかった時間を記録します。ここを飛ばすと「何を委託すべきか」も「いくらまで払えるか」も決まりません。所要1週間。
  2. 【範囲設計】委託する業務と自社に残す業務を線引きする:表2の7パターンを参考に、切り出す業務を1〜2つに絞ります。採否判断は自社に残すのが原則です。所要2〜3日。
  3. 【相見積もり】3社に同一条件で見積依頼する:業務項目・月次想定量・レポート頻度・媒体費の扱いを揃えて依頼します。条件が揃っていない見積もりの比較は意味を持ちません。所要1〜2週間。
  4. 【契約確認】許認可と契約条項をチェックする:有料職業紹介事業許可番号、指揮命令系統の定め、最低契約期間、解約予告期間、秘密保持の範囲を確認します。所要2〜3日。
  5. 【オンボーディング】評価基準と文面テンプレートを渡す:見送り理由の型、必須要件と歓迎要件、NG表現、返信のトーン。ここに時間をかけるほど初月の精度が上がります。所要1〜2週間。
  6. 【運用開始・振り返り】月次でKPIを検証する:送信数・返信率・書類通過率・面接設定率・削減工数の5指標を月次で確認し、3カ月目に範囲の拡大/縮小を判断します。

よくある失敗パターン3つ

【回避策】

① 評価基準を渡さないまま書類選考を委託する → 通過者の質が安定せず、結局すべて自社で見直すことになります。見送り理由を3〜5個の型に落としてから発注してください。

② 媒体費を含まない見積もりで予算を組む → 実費が後から乗り、初月で予算超過します。総額比較は必ず媒体費込み・別の条件を揃えて行ってください。

③ 代行スタッフに直接作業指示を出す → 37号告示の観点でリスクが生じます。窓口は代行会社のディレクター1本に絞ってください。

社内に採用の専任者がいない場合でも、この6ステップのうち①②④は経営者や総務担当者が兼務で進められます。③⑤⑥を委託先と分担する形にすれば、専任者ゼロの状態からでも運用は立ち上がります。

よくある質問

Q1. 採用代行を業務委託した場合の最低料金はいくらからですか?

A. スポット型であれば1業務3万円程度から、月額型であれば求人原稿の作成・更新代行で月5万円程度からが目安です。継続的な運用を伴う業務(スカウト送信代行、応募者対応代行など)は月10万円前後からのケースが多くなります。BOXILの利用企業342人への調査でも、月額費用の最多層は10万円〜20万円という結果が出ています。※当社推計/業界相場目安

Q2. 業務委託と労働者派遣では、どちらが安く済みますか?

A. 単純比較はできません。業務委託は「業務プロセス」への対価、労働者派遣は「稼働時間」への対価だからです。目安として、月40時間相当の作業を派遣で埋めると時給2,000〜3,500円換算で月8万〜14万円、業務委託なら同等の業務範囲で月10万〜25万円です。ただし業務委託には設計・改善提案が含まれることが多く、単価だけの比較は実態を反映しません。判断は「削減できた自社工数 ÷ 支払額」で行ってください。

Q3. 採用代行に選考や候補者の推薦まで任せると違法になりますか?

A. 業務の内容によります。面接日程の調整や事務連絡など、採否判断や勧誘に直接関与しない業務であれば、通常は許可なく委託できます。一方、候補者への応募勧奨や推薦を伴う場合は、職業安定法36条の委託募集の許可、あるいは有料職業紹介事業の許可が関係してきます。契約前に受託側の許認可を書面で確認してください。判断は実態に即して行われる点も、37号告示の考え方と共通しています。

Q4. 契約期間は何カ月が一般的ですか?途中で解約できますか?

A. 部分委託で3カ月、フル委託で6カ月の最低契約期間を設定しているサービスが一般的です。解約予告期間は30日前または60日前が多く、この期間分の費用は発生します。初回は最低契約期間の短いプランで試し、成果を確認してから期間を延ばすほうが、結果的にリスクを抑えられます。※当社推計/業界相場目安

Q5. 2024年4月の法改正は、採用代行の委託範囲に影響しますか?

A. 影響します。2024年4月から、すべての労働契約の締結時に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要となり[1]、労働者の募集時等に明示すべき事項も追加されました。求人票の記載内容そのものが法令の対象になったため、原稿作成を委託する際は、改正に対応したテンプレートを提供してもらえるかを条件に入れておくと安心です。

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参考資料

  1. 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
  2. 厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第2集)」 https://www.mhlw.go.jp/content/000780138.pdf
  3. 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」 https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/
  4. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html
  5. リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』 https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20250220001/
  6. BOXIL Magazine「【342人調査】採用代行(RPO)の費用相場は月額10〜20万円」 https://boxil.jp/mag/a8409/
  7. doda「採用代行(RPO)の費用相場はいくら?料金システムと業務範囲も解説」 https://www.saiyo-doda.jp/guide/kihon/rpo-price
  8. 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
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