採用代行の業務委託契約書で確認すべき12項目|締結前チェックリストと条項例

採用代行の業務委託契約書で確認すべき12項目を解説。業務範囲、料金、KPI、個人情報、再委託、許認可、解約、データ削除の条項例と締結前チェックリストを紹介します。


採用代行を利用すると、求人票の作成やスカウト送信、候補者対応などの負担を減らせます。一方、業務委託契約書に「採用業務一式」としか書かれていないと、「どこまで料金に含まれるのか」「候補者情報を誰が管理するのか」「成果が出ない場合に解約できるのか」といった認識のずれが生じやすくなります。

採用代行の契約では、月額料金だけでなく、業務範囲、指揮命令、必要な許可、個人情報、KPI、契約終了後のデータ処理まで決めることが重要です。

本記事では、採用代行の業務委託契約書で確認したい12項目を、一般的な条項例とともに解説します。

注意事項
本記事の条項例は、契約時の論点を整理するための一般的な記載例です。契約書全文のひな形ではなく、個別企業への法的助言でもありません。実際の業務内容や運用方法によって必要な許可・届出・条項は異なるため、契約締結前に弁護士、都道府県労働局などの専門機関へ確認してください。法令・制度の記載は2026年8月時点の情報に基づきます。

採用代行の業務委託契約書は「基本契約+仕様書」で整理する

採用代行では、秘密保持や損害賠償などの共通条件を基本契約書に定め、実際の業務範囲、料金、担当者、KPI、契約期間を個別契約書や仕様書に分ける方法が実務的です。

採用人数や募集職種が変わるたびに基本契約を結び直す必要がなくなり、業務追加時の変更履歴も残しやすくなります。ただし、基本契約と個別契約で内容が異なる場合に、どちらを優先するかも明記しておきましょう。

1.業務範囲と社内に残す判断を明確にする

最初に、採用計画、求人票作成、媒体運用、候補者選定、スカウト送信、応募対応、面接調整、面接、内定者フォロー、レポート作成を一覧化します。

特に、求人公開、スカウト対象者の決定、合否、労働条件、最終的な採否について、委託先がどこまで関与し、誰が承認するかを明確にしてください。「採用業務全般」という表現だけでは、追加料金や対応漏れの原因になります。

条項例
受託者は、別紙業務一覧で実施対象とした業務を行う。採用要件の変更、求人情報の公開、候補者の合否・採否および労働条件の決定は、委託者の承認を要する。

2.指揮命令と業務の進め方を定める

業務委託では、受託会社が自ら従業者を管理し、独立して業務を処理することが基本です。発注企業が受託会社の担当者へ勤務時間、配置、作業方法などを直接指示すると、契約名が業務委託でも、実態によっては労働者派遣に該当する可能性があります。

厚生労働省の37号告示では、契約の名称や料金方式ではなく、指揮命令、労務管理、事業者としての独立性などから実態を判断します。定例会議や成果物への要望が直ちに問題になるわけではありませんが、日常の依頼窓口は受託責任者にまとめると安全です。なお、ここでいう37号告示は、職業安定法第37条とは別の基準です。

条項例
委託者からの業務上の依頼は受託責任者に対して行う。受託者の従業者に対する業務遂行方法、勤務時間および配置に関する指示・管理は、受託者が行う。

3.職業紹介・委託募集に関する許可を確認する

採用代行だから一律に許可が必要、または一律に不要とは判断できません。名称ではなく、実際に誰が候補者を勧誘し、応募を受け、雇用成立に向けたあっせんをしているかで区分します。

有料で職業紹介事業を行う場合は、職業安定法第30条に基づく許可が必要です。また、雇用主が自社の従業員ではない者へ報酬を与えて労働者の募集を委託する場合は、同法第36条第1項の委託募集に関する許可が問題になります。無報酬の委託募集には、同条第3項の届出規定があります。詳細は厚生労働省の職業安定法を確認してください。

そのため、「企業名義のアカウントでスカウトを送るから必ず許可不要」「送信作業だけなら無条件に許可不要」とは断定できません。事務補助、募集情報等提供、委託募集、職業紹介のどれに該当するかを業務フローに沿って確認しましょう。

条項例
当事者は、本業務の実態に応じて必要となる許可、届出その他の手続と、その実施主体を事前に確認する。業務内容の変更により新たな手続が必要となる可能性を認識した場合は、相手方へ速やかに通知する。

4.候補者の個人情報と安全管理措置を定める

履歴書、職務経歴書、面接記録、評価、連絡先は重要な個人情報です。利用目的、閲覧者、保存場所、アクセス権限、持ち出し、漏えい時の報告、監査方法を契約書またはセキュリティ仕様書に定めます。

個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人データの取扱いを委託する企業に、適切な委託先の選定、委託契約、取扱状況の把握など、必要かつ適切な監督を求めています。秘密保持契約を結ぶだけで監督が完了するわけではありません。

条項例
受託者は、候補者情報を本業務の目的に限って取り扱い、必要最小限の者にのみアクセスを認める。漏えい等を把握した場合は、別途定める期限内に委託者へ初報を行い、調査、本人対応および行政機関への報告に協力する。

5.再委託と生成AIの利用条件を決める

スカウト送信や日程調整を別会社やフリーランスへ再委託する場合、委託元は再委託先と業務内容、個人データの取扱方法を把握する必要があります。事前承認制か事前通知制か、再委託先を変更した場合の扱いも決めましょう。

生成AIを利用する場合は、候補者情報や社外秘情報を入力できるサービス、学習利用の有無、保存先、国外での取扱いを確認します。

条項例
受託者は、委託者の事前承認なく候補者情報を取り扱う業務を再委託せず、候補者を識別できる情報を外部の生成AIサービスへ入力しない。

6.採用媒体のアカウントとデータの帰属を決める

採用媒体の契約者、管理者権限、ログイン方法、利用料の負担、契約終了時の引き継ぎを決めます。媒体規約に反するID・パスワードの共有を避け、可能であれば担当者ごとの権限を発行してください。

条項例
採用媒体の契約名義およびアカウントの帰属は委託者とする。受託者は媒体規約と委託者の情報管理規程を遵守し、契約終了時に付与された権限を返還または削除する。

7.求人原稿などの知的財産権を整理する

求人票、スカウト文面、面接評価シート、採用レポートなどについて、納品後に発注企業が修正・再利用できるかを確認します。受託会社が以前から保有するテンプレートやノウハウと、委託業務で新たに作成した成果物は分けて扱うと明確です。

条項例
受託者が従前から保有するノウハウ等を除き、本業務で作成した成果物の利用条件は別紙に定める。受託者は、委託者の事前承諾なく社名、求人内容または成果を実績として公表しない。

8.料金・追加費用・支払条件を具体化する

月額固定、作業時間、スカウト通数、成果報酬のどれを基準にするかを明記します。媒体掲載料、スカウト枠購入費、交通費、撮影費、追加職種への対応が月額料金に含まれるかも確認してください。

受託先が従業員を使用しない個人事業主や一定の一人法人などに該当し、発注側を含む適用要件を満たす場合は、フリーランス法への対応も必要です。すべての採用代行契約に一律適用されるものではありませんが、対象取引では取引条件の書面・電磁的方法による明示などが求められます。詳しくは公正取引委員会の特設サイトを確認してください。

条項例
委託料は月額○円(税別)とする。媒体費その他の実費および契約範囲外の作業は、委託者が事前に書面または電磁的方法で承認した場合に限り、別途請求できる。

採用代行全体の費用は、採用代行を業務委託する場合の料金記事も参考にしてください。

9.KPIの定義と報告方法を決める

送信数、開封率、返信率、応募数、面接設定数、採用数は性質が異なります。算出式、集計元、集計期間、報告頻度をそろえ、改善会議の開催方法まで決めましょう。

採用数は待遇、市場環境、選考速度などにも左右されます。KPIを運用改善の指標にするのか、達成義務にするのかを曖昧にしないことが重要です。

条項例
KPIの定義、算出方法および報告頻度は別紙に定める。KPIは運用改善のための管理指標であり、別途明記した場合を除き、採用人数その他の成果を保証するものではない。

スカウト業務の範囲とKPI設計は、スカウト代行の料金・費用相場で詳しく解説しています。

10.契約期間・更新・中途解約を定める

最低契約期間、自動更新、プラン変更、中途解約の予告期間、重大な違反があった場合の解除、引き継ぎ期間を定めます。解約通知後も進行中の候補者対応を続けるのか、料金を日割りするのかも確認が必要です。

フリーランス法の適用対象となる一定期間以上の継続的業務委託では、中途解除や不更新について事前予告・理由開示の義務が生じる場合があります。

条項例
契約期間および更新条件は個別契約に定める。中途解約を希望する当事者は、○日前までに通知し、進行中の候補者対応と引き継ぎ方法を協議する。

11.契約終了後のデータ返却・削除を決める

終了時に受け取るデータの範囲、形式、納品期限、バックアップ上の保存期間、削除証明の有無を決めます。候補者への連絡履歴や選考状況が受託会社の環境だけに残ると、採用活動を継続できません。

条項例
受託者は契約終了後○日以内に、指定形式で業務データを委託者へ返還する。法令上の保存義務があるものを除き、候補者情報を削除し、委託者の求めに応じて削除完了を報告する。

12.責任分担・求人情報の承認・損害賠償を定める

求人内容の事実確認、候補者への連絡、面接評価、採否、労働条件通知について、作成者と承認者を決めます。契約で担当を分けても、各当事者に法令上課される義務まで自由に移転できるわけではありません。

2024年4月から、募集時などに明示すべき事項へ「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期契約を更新する場合の基準」が追加されています。求人原稿を外注する場合も、公開前の確認手順を設けてください。詳細は厚生労働省の職業安定法施行規則改正に関する案内で確認できます。

条項例
委託者は、求人情報および労働条件の事実関係を確認し、公開前に承認する。受託者は、委託範囲内で内容の正確性と更新状況を確認し、誤りを把握した場合は速やかに報告する。損害賠償の範囲、上限および例外は別途定める。

採用代行の業務委託契約書|締結前チェックリスト

確認項目締結前に確認する内容確認欄
業務範囲実施業務・対象外業務・承認者が一覧化されている
指揮命令依頼窓口と受託側の管理責任者が決まっている
許可・届出職業紹介・委託募集などの該当性を確認した
個人情報利用目的、アクセス権、事故報告、監査方法がある
再委託・AI再委託先、承認方法、AIへの情報入力条件が明確
媒体アカウント名義、権限、費用、終了時の返還方法が明確
知的財産求人原稿などの修正・再利用・実績公開条件が明確
料金月額内の業務、実費、追加料金、支払期日が明確
KPI算出式、集計元、報告頻度、成果保証の有無が明確
解約契約期間、更新、予告期間、引き継ぎ条件が明確
データ削除返却形式、期限、バックアップ、削除報告が明確
責任分担求人内容の承認、法令対応、損害賠償条件が明確

チェックが付かない項目は、口頭確認で済ませず、契約書、仕様書、議事録のいずれかに残しましょう。採用業務そのものが整理できていない場合は、先に採用業務が回らない原因と改善策を確認し、社内に残す業務と外注する業務を切り分けることをおすすめします。

採用代行の業務委託契約書に関するよくある質問

Q1.秘密保持契約を結べば、候補者情報の管理は十分ですか?

十分とは限りません。秘密保持に加えて、アクセス権限、安全管理措置、漏えい時の報告、再委託、監査、契約終了時の返却・削除を定める必要があります。委託元には、委託先を必要かつ適切に監督することが求められます。

Q2.採用代行会社には必ず職業紹介の許可が必要ですか?

必ず必要とは限りません。事務作業の補助、募集情報の提供、委託募集、職業紹介では適用される規制が異なります。ただし、職業紹介に当たる行為を有料で事業として行う場合は、職業安定法第30条の許可が必要です。実際の業務フローをもとに判断してください。

Q3.採用人数をKPIに設定すれば、未達時に返金を求められますか?

KPIを設定しただけでは、返金条件にはなりません。採用人数を保証するのか、努力目標とするのか、未達時に減額・再実施・解約のどれを適用するのかを契約書に明記する必要があります。

Q4.契約書だけでなく仕様書も必要ですか?

業務の多い採用代行では、仕様書の作成をおすすめします。担当職種、媒体、送信通数、対応時間、承認フロー、レポート項目など、変更されやすい条件を仕様書に分けると管理しやすくなります。

Q5.この記事の条項例をそのまま契約書に使えますか?

一般的な論点整理には利用できますが、そのまま締結することはおすすめしません。許可の要否、個人情報の流れ、料金方式、再委託の有無などに応じて修正し、弁護士等の専門家による確認を受けてください。

採用代行の契約前に、業務範囲と運用方法を整理しましょう

採用代行の契約トラブルは、契約書の文章だけでなく、委託する業務と社内に残す判断が整理されていないことから起こります。

おまかせ採用では、採用設計、求人票作成、媒体運用、スカウト、候補者対応など、現在の課題に合わせた支援範囲をご提案します。契約書の法的な確認は弁護士等へご相談いただきながら、無料相談では、依頼業務、役割分担、KPI、運用フローの整理をお手伝いします。

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