採用の費用対効果を測る3つの計算式|採用ROI・回収月数・実質採用単価とチャネル別比較表

「人材紹介に1人115万円は高すぎる」――そう感じたとき、判断材料になるのは金額そのものではなく、その115万円が何カ月で回収できるかです。中小企業の従業員1人あたり付加価値額は年665.6万円、労働分配率は74.4%。ここから逆算すると、1人の採用が会社に残す金額は月あたり約14万円で、115万円の回収には約8カ月かかる計算になります。

本記事では、採用の費用対効果を判定するための採用ROI・回収月数・実質採用単価の3つの計算式を、公的統計に基づくチャネル別比較表とあわせて整理しました。経営会議で採用予算を通すための説明の型まで含めています。

この記事でわかること

  • 費用対効果を測る3つの指標採用ROI・回収月数・実質採用単価の計算式と、どの場面でどれを使うか
  • 分子(採用による利益)の作り方:公的統計の1人あたり付加価値額665.6万円から、自社の月次リターンを出す手順
  • チャネル別の費用対効果比較:人材紹介・求人広告・スカウト・リファラル・RPOの回収月数と3年ROI
  • 早期離職を織り込んだ実質単価:定着率60〜100%で採用単価が115万円→191.7万円まで変わる仕組み

1. 採用の費用対効果とは|「単価が安い=効果が高い」ではない

採用の費用対効果とは、採用に投じた費用に対して、その人材が会社にもたらすリターンがどれだけ上回っているかを指します。ここでよくある誤解が、「採用単価が安いチャネルほど費用対効果が高い」という考え方です。

単価が安くても、入社した人が半年で辞めれば投資は回収できません。逆に単価が高くても、5年定着して高い付加価値を生むなら投資として成立します。費用対効果は「かけた金額」ではなく「金額と期間とリターンの関係」で決まります。

そのため、判断には目的の異なる3つの指標を使い分けます。

指標計算式何が分かるか使う場面
採用ROI(採用による利益 − 採用コスト)÷ 採用コスト × 100投資倍率。投資として成立しているか年度予算の承認・振り返り
回収月数採用コスト ÷ 1人あたり月次リターン何カ月で元が取れるかチャネル選定・上限単価の設定
実質採用単価採用コスト ÷ 定着率離職を織り込んだ本当の単価選考基準・オンボーディングの評価

【ここだけ押さえる】

3つのうち、日常の意思決定で最も使いやすいのは回収月数です。「この求人にいくらまで払えるか」という問いに、月数という直感的な単位で答えが出るからです。ROIは年次の振り返り、実質単価は離職が出たときの検証に使います。単価そのものの相場や下げ方については、採用単価を下げる7つの方法|計算式・相場・コスト削減事例にまとめています。

2. なぜ今、採用費用の対効果を測る必要があるのか|4つのデータ

「採用は必要経費」で済ませられた時代とは、前提条件が変わっています。

① 中小企業に残る利益の幅が、そもそも薄い

2026年版中小企業白書によると、中小企業の労働分配率は中規模企業74.4%・小規模企業81.5%(大企業47.3%)で、付加価値額に占める営業純益の割合は9.5%(大企業36.0%)にとどまります[1]採用費用を回収する原資が構造的に薄いということです。同じ115万円の投資でも、大企業と中小企業では意味の重さが違います。

② 採用目標そのものが縮小に向かっている

マイナビの調査では、年間の中途採用目標人数の平均は2023年30.8人・2024年28.7人から2025年は16.7人へ縮小し、実際の平均採用人数も12.3人に減りました[2]。採用件数が減れば、1件あたりの判断の精度が結果を左右します。年20件のうち数件が外れても平均でならせた時代とは違い、12件のうち2件外すと影響が大きく出ます。

③ 人手不足は続き、単価は下がりにくい

帝国データバンクの調査では、2026年4月時点で正社員の不足を感じている企業は50.6%と、4月としては4年連続で5割を超えました[3]。厚生労働省「一般職業紹介状況」の2026年5月分でも有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍です[4]。競合が同時に採りに来ている以上、単価だけを下げる交渉には限界があります

④ 新卒は充足企業が4割を切っている

リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』では、2025年卒で「採用予定数を充足できた」企業は37.2%でした[5]。予定どおり採れない前提で予算を組むなら、採れなかった分の費用も含めた実効的な費用対効果で見る必要があります。

【この4データの読み方】

①〜④が示すのは、「採用費用は削る対象ではなく、回収設計をする対象になった」ということです。安いチャネルに寄せるのではなく、いくらまでなら回収できるかの上限を先に決める。この順番の入れ替えが、費用対効果の議論の出発点になります。

3. 【計算式①】採用ROI|分子は「1人あたり付加価値額」で置く

採用ROIでつまずくのは、ほぼ例外なく分子(採用による利益)です。「その人が生んだ利益」を個人単位で切り出すのは、営業以外の職種では困難だからです。

そこで実務では、公的統計の1人あたり付加価値額を出発点に置く方法が使えます。

分子の作り方(3ステップ)

  1. 【1人あたり付加価値額を置く】:2026年版中小企業白書によると、中小企業の従業員1人あたり労働生産性(付加価値額÷従業員数)は2024年度で665.6万円です(大企業は1,935.1万円)。自社の決算書から算出できるならそちらを優先します。
  2. 【人件費分を差し引く】:付加価値額のうち人件費に回る割合が労働分配率で、中規模企業は74.4%(前掲)。665.6万円 ×(1 − 0.744)= 約170.4万円が、人件費を支払ったあとに会社側に残る年間の付加価値です。
  3. 【月次に割る】:170.4万円 ÷ 12カ月 = 月あたり約14.2万円。これが「1人採用すると、月14.2万円ずつ回収が進む」という基準線になります。

採用ROIの計算例

採用ROI(%)=(1人あたり年間リターン × 在籍年数 − 採用コスト)÷ 採用コスト × 100

人材紹介経由で採用単価115万円、3年在籍した場合:

(170.4万円 × 3年 − 115万円)÷ 115万円 × 100 = 約344%

1年で見れば(170.4 − 115)÷ 115 × 100 = 約48%。つまり1年目でも投資としてはプラス、3年在籍すれば投じた額の4.4倍が返る計算になります。

業種別|1人あたりに残る付加価値の目安

業種によって前提が大きく変わるため、自社に近い数値を使ってください。

業種1人あたり労働生産性(2024年度)会社に残る年額(労働分配率74.4%で試算)月あたり
建設業884.8万円約226.5万円約18.9万円
製造業713.6万円約182.7万円約15.2万円
情報通信業709.2万円約181.6万円約15.1万円
卸売業・小売業705.5万円約180.6万円約15.1万円
学術研究、専門・技術サービス業705.5万円約180.6万円約15.1万円
運輸業、郵便業617.1万円約158.0万円約13.2万円
生活関連サービス業、娯楽業517.6万円約132.5万円約11.0万円
宿泊業、飲食サービス業343.0万円約87.8万円約7.3万円

1人あたり労働生産性は2026年版中小企業白書(財務省「法人企業統計調査年報」再編加工)による中小企業の値です。 ※右2列は当社推計/業界相場目安。労働分配率を一律74.4%として試算した参考値です。

宿泊業・飲食サービス業は月あたり7.3万円と、建設業(18.9万円)の4割以下です。同じ採用単価50万円でも、建設業なら2.6カ月、宿泊・飲食なら6.8カ月かかる。業種を無視した「採用単価の相場」に意味がないのはこのためです。

4. 【計算式②】回収月数|チャネル別の比較表

回収月数は、実務で最も出番の多い指標です。

回収月数 = 採用コスト ÷ 1人あたり月次リターン

全業種平均の月14.2万円を使って、主要チャネルを比較します。

チャネル1人あたり採用コストの目安回収月数3年ROI特徴
ハローワーク約10万円
(社内工数のみ)
約0.7カ月約5,012%費用は最小。母集団の質にばらつき
リファラル約30万円(報奨金)約2.1カ月約1,604%定着率が高くなりやすい
求人広告約35万円約2.5カ月約1,360%原稿の質で応募数が大きく変動
ダイレクトリクルーティング約60万円約4.2カ月約752%運用工数が単価に直結する
採用代行(月額固定型)約60万円(月30万円×6カ月÷3名)約4.2カ月約752%採用人数が増えるほど単価が下がる
人材紹介約115万円約8.1カ月約344%手数料は理論年収の30〜35%が相場

※当社推計/業界相場目安。月次リターンは全業種平均14.2万円で試算。3年ROIは(14.2万円×36カ月 − 採用コスト)÷ 採用コスト × 100で算出した参考値です。

【ここだけ押さえる】

この表で重要なのは順位ではなく、「人材紹介でも3年在籍すれば3年ROIは約344%」という点です。人材紹介は割高ですが、投資としては成立しています。問題は単価の高さそのものではなく、8.1カ月より前に辞められたときに一気に赤字化すること。だからこそ次章の実質採用単価が必要になります。エージェント費用と他チャネルの比較は、人材エージェントが高すぎる…採用代行に切り替えた場合の費用比較でも整理しています。

5. 【計算式③】実質採用単価|早期離職を織り込む

厚生労働省「雇用動向調査」の令和6年結果では、離職率は14.2%(一般労働者は11.5%)です[6]。つまり平均的に見て、採用した10人のうち1人以上は1年以内に抜けます。この分を織り込んだのが実質採用単価です。

実質採用単価 = 採用コスト ÷ 定着率

1年後の定着率採用単価115万円の場合の実質単価回収月数増加分
100%115.0万円約8.1カ月
88.5%
(一般労働者の平均水準)
約129.9万円約9.1カ月+14.9万円
80%約143.8万円約10.1カ月+28.8万円
70%約164.3万円約11.6カ月+49.3万円
60%約191.7万円約13.5カ月+76.7万円

※当社推計/業界相場目安。定着率は入社1年後の在籍割合として試算しています。

定着率が60%まで落ちると、実質単価は191.7万円まで膨らみ、回収に13.5カ月かかります。これは「人材紹介の単価を下げる交渉」で取り返せる幅を大きく超えています。費用対効果の改善余地は、単価交渉より定着にあることが数字で確認できます。

なお、早期離職の引き金になりやすいのが、入社前後の条件認識のズレです。2024年4月からは、労働契約の締結・更新時に就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が義務化されました[7]。求人票とオファーレターの記載を揃えておくことは、法令対応であると同時に、実質採用単価を押し下げる施策でもあります。

6. チャネル別・費用対効果の総合比較

単価と回収月数だけでは判断を誤ります。立ち上がりの速さ定着しやすさを加えた総合比較が次の表です。

チャネル単価回収月数戦力化までの期間定着しやすさ向いているケース
ハローワーク地域密着・未経験可の職種
リファラル社員数20名以上で文化が固まっている
求人広告認知があり応募が集まる職種
ダイレクトリクルーティング応募が来ない専門職・経験者
採用代行(月額固定型)複数職種を同時に進める/専任者不在
人材紹介×急ぎで即戦力が必要

※当社推計/業界相場目安。◎○△×は相対評価です。

読み取り方は2つです。リファラルは全項目で優位だが、母集団の量が読めないこと。人材紹介は単価が最も重いが、戦力化までが最短であること。「欠員が出て今すぐ埋めたい」場面では、回収月数が長くても人材紹介が合理的なケースがあります。費用対効果は状況によって答えが変わるため、チャネルを1つに絞るのではなく配分で考えます。

7. 採用費用の内訳を洗い出す|見落としやすい6つの内部コスト

ここまでの計算は、分母である採用コストを正しく把握できていることが前提です。実際には、外部に支払った金額しか集計していない企業がほとんどで、その場合は費用対効果を実態より良く見積もることになります。

見落としやすいコスト金額の目安(1名採用あたり)算出方法
採用担当者の人件費8万〜15万円時給換算 × 投下時間(応募対応・日程調整・書類選考)
面接官(現場社員)の工数3万〜8万円面接1回1時間 × 面接官数 × 時給換算
経営層の面接時間2万〜5万円最終面接の時間 × 役員時給換算
採用管理システム・媒体の固定費1万〜5万円年間費用 ÷ 年間採用人数
内定後フォロー・入社手続き2万〜4万円書類作成・面談・受入準備の工数
入社後3カ月の教育・OJT15万〜40万円指導者の工数 + 研修費

※当社推計/業界相場目安。職種・企業規模により変動します。

合計すると31万〜77万円。人材紹介の115万円に上乗せすると、実際の投下額は146万〜192万円になります。中小企業の1人あたり能力開発費は年9,130円(大企業は21,948円)と2026年版中小企業白書で公表されていますが、これは制度化された研修費のみで、現場のOJT工数は含まれていません。この見えないコストを算入して初めて、費用対効果の議論が実態に近づきます。

【回避策】

全項目を精緻に測る必要はありません。採用担当の人件費と面接官の工数の2つだけを、時給換算 × 投下時間で足してください。この2項目で内部コストの6〜7割を捕捉できます。精度より、毎回同じ方法で測って比較可能にすることが重要です。

8. 採用予算と外注費用の目安|内製・部分外注・全部委託の比較

内部コストを金額に換算すると、「自社でやるほうが安い」が必ずしも成り立たないことが見えてきます。

進め方月あたりの費用採用担当の月間工数3名採用時の1人あたり総額向いているケース
完全内製媒体費のみ
(月5万〜15万円)
40〜60時間約34万〜66万円専任担当が1名以上いる
部分外注(スカウト運用のみ)月10万〜20万円15〜25時間約29万〜55万円応募は来るが対応が追いつかない
採用代行(月額固定型)月30万〜50万円5〜10時間約63万〜106万円専任者不在/複数職種を同時進行
人材紹介中心成功報酬のみ10〜15時間約121万〜159万円急ぎで即戦力が必要

※当社推計/業界相場目安。採用担当の人件費を時給3,000円として内部コストに算入した参考値です。月額固定型の料金体系については別途ご確認ください。

判断のポイントは、採用担当の月間工数を金額に換算して比較することです。月50時間 × 時給3,000円 = 15万円分の人件費が、完全内製の「見えない費用」として毎月発生しています。採用代行の月30万円は、この15万円と、担当者が空けた時間で生む付加価値との差額で評価すべき数字です。

自社の採用単価と回収月数の試算から、無料でご相談いただけます。

9. 費用対効果を上げる5つの打ち手

  1. 【上限単価を先に決める】:「回収月数6カ月以内」といった基準を置き、それを超えるチャネルは使わないか、使う理由を明文化します。基準がないと、その場の必要性でいくらでも高い手段を選んでしまいます。
  2. 【定着率を分母に組み込む】:チャネル別に入社1年後の在籍率を集計し、実質単価で比較します。単価が安くても定着率が低いチャネルは、実質では最も高くつくことがあります。
  3. 【歩留まりを上げて母集団コストを下げる】:内定承諾率が50%から80%に上がれば、必要な母集団は約6割で済み、媒体費も比例して下がります。具体的な改善策は採用の歩留まり改善|計算式・選考段階別の改善施策7選にまとめています。
  4. 【戦力化までの期間を短縮する】:回収は入社日ではなく戦力化した時点から始まります。オンボーディングを3カ月から1.5カ月に短縮できれば、回収月数は実質1.5カ月分前倒しになります。
  5. 【内部コストを毎回同じ方法で測る】:測り方が変わると比較ができません。採用担当の工数記録を月次で残し、四半期ごとにチャネル別の実質単価を更新します。

【回避策】

費用対効果の改善で最も避けたいのは、単価の安いチャネルにいきなり全振りすることです。ハローワークは回収月数0.7カ月ですが、必要な人数が集まらなければ採用単価はゼロでも成果もゼロ。「回収月数の短いチャネルから順に、集まる範囲まで使い切り、足りない分を高いチャネルで埋める」という配分が現実的です。

10. 経営会議で採用予算を通すための説明の型

数字が揃っても、伝え方が合っていないと予算は通りません。経営層が知りたいのは採用の詳細ではなく、「その支出はいつ回収されるのか」の1点です。

以下の4行で構成すると、追加の質問がほぼ出なくなります。

  1. 【投資額】:「営業職2名の採用に、外部費用230万円と社内工数分70万円、合計300万円を投じます」
  2. 【回収の根拠】:「当社の1人あたり付加価値額は◯万円、労働分配率は◯%。1名あたり月◯万円ずつ回収が進みます」
  3. 【回収時期】:「2名で月◯万円。300万円の回収完了は入社から◯カ月後、◯年◯月の見込みです」
  4. 【採らなかった場合の損失】:「この2名を採らない場合、機会損失は年間◯万円。採用しないほうが高くつきます」

【ここだけ押さえる】

4行目の「採らなかった場合の損失」が最も効きます。採用の議論は「コストをかけるか否か」の枠で始まりがちですが、実際には採らないこともコストです。欠員のまま放置した部署の残業代、受注できなかった案件、既存社員の離職リスク。これらを金額に置き換えて並べると、議論の前提が「支出の是非」から「どちらの損失が小さいか」に変わります。

11. 費用対効果の測定でよくある4つの間違い

間違い①:外部費用だけで比較している

求人広告35万円と人材紹介115万円を並べて「広告のほうが3倍安い」と結論づけるパターンです。実際には、広告経由は応募対応や書類選考の工数が大きく、内部コストを足すと差は縮まります。

【回避策】

比較するときは、必ず同じ範囲のコストで揃えること。外部費用だけで比べるか、内部コストまで含めて比べるか、どちらかに統一します。混在させた比較は結論を誤らせます。

間違い②:採用できなかった費用を計上していない

3名募集して1名しか採れなかった場合、その3名分の媒体費・工数はすべて1名に乗ります。募集人数ではなく実際の採用人数で割るのが原則です。充足企業が37.2%にとどまる新卒採用では、この差が特に大きくなります。

間違い③:期間をまたいだ費用を無視している

年間契約の媒体費やATSの利用料を、契約した月の採用にだけ乗せると単価が跳ね上がります。年間費用 ÷ 年間採用人数で按分してください。逆に、期末に慌てて計上すると翌期の数字と比較できなくなります。

間違い④:チャネル別に分けずに全体平均だけを見ている

全体平均の採用単価が60万円でも、内訳が「人材紹介115万円が2名、ハローワーク10万円が3名」なら、改善すべきはチャネル配分です。

【回避策】

集計は必ずチャネル別・職種別の2軸で行います。全体平均は経営報告用、意思決定に使うのはチャネル別の数字、と役割を分けてください。

よくある質問

Q1. 採用ROIの「利益」はどう計算すればよいですか?

個人単位の利益貢献を切り出すのは難しいため、1人あたり付加価値額から労働分配率分を差し引く方法が実務的です。自社の決算書があれば「付加価値額 ÷ 従業員数 ×(1 − 労働分配率)」で算出できます。データがない場合は、2026年版中小企業白書の中小企業平均である1人あたり665.6万円と労働分配率74.4%を使い、年間約170.4万円(月14.2万円)を出発点にしてください。営業職など個人の売上が明確な職種は、粗利額をそのまま使う方法もあります。

Q2. 採用ROIは何%あれば合格ですか?

1年で100%を超えていれば十分に良好です。100%は「1年で投資額と同額のリターン」を意味し、2年目以降はすべて上乗せになります。ただし業種によって前提が変わるため、絶対値より自社の前年比とチャネル間の比較で判断してください。実務では、ROIより「回収月数6カ月以内」といった月数基準のほうが運用しやすく、現場でも共有しやすい指標になります。

Q3. 採用単価が高いチャネルは使わないほうがよいですか?

状況によります。 人材紹介は1人あたり約115万円と最も高額ですが、戦力化までの期間が最短で、3年在籍すれば3年ROIは約344%になります。欠員による機会損失が月30万円出ている状況なら、4カ月早く埋められる時点で120万円の損失を回避でき、単価差を上回ります。判断軸は「単価の絶対額」ではなく「回収月数と、採らなかった場合の損失の比較」です。

Q4. 早期離職が出た場合、費用対効果はどう計算し直しますか?

実質採用単価(採用コスト ÷ 定着率)で計算し直します。たとえば5名採用して1年以内に2名離職した場合、定着率は60%。採用単価115万円なら実質単価は約191.7万円まで上がり、回収月数は8.1カ月から13.5カ月に伸びます。離職者が出たチャネルを特定し、そのチャネルの実質単価を更新することで、次期の予算配分に反映できます。

Q5. 採用にかかる社内工数はどこまで費用に含めるべきですか?

最低限、採用担当者の人件費と面接官(現場社員)の工数の2つは含めてください。この2項目で内部コストの6〜7割を捕捉できます。算出は「時給換算 × 投下時間」で十分です。経営層の面接時間、採用管理システムの費用、入社後3カ月のOJT工数まで含めると精度は上がりますが、毎月続かなければ意味がありません。精度より、毎回同じ方法で測って比較可能にすることを優先してください。

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採用の費用対効果は、計算式そのものより「自社の数字をどこから持ってくるか」でつまずくことがほとんどです。決算書のどの数字を付加価値額として使うか、内部コストをどこまで含めるか、チャネル別の定着率をどう集計するか。ここが決まれば、あとは同じ式を毎期回すだけになります。

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参考資料

  1. 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」2026年
    https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html(最終閲覧:2026年8月6日)
  2. 株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」2026年
    https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260327_109053/(最終閲覧:2026年8月6日)
  3. 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」2026年
    https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/(最終閲覧:2026年8月6日)
  4. 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html(最終閲覧:2026年8月6日)
  5. 株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』2025年
    https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20250220001/(最終閲覧:2026年8月6日)
  6. 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」2025年
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html(最終閲覧:2026年8月6日)
  7. 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
    https://muki.mhlw.go.jp/rule.html(最終閲覧:2026年8月6日)
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