営業職は中途採用の中でも最も募集ポジションが多く、競合する求人も多い職種です。マイナビの中途採用状況調査では、中途採用に積極的な企業は90.1%、1社平均の中途採用人数は20.8人と高い水準が続いています[2]。同時に、有効求人倍率は令和7年11月時点で1.18倍と求職者優位の市場が継続しており、ただ求人を出しても応募が積み上がらない状況が続いています[1]。
本記事では、営業職の採用のコツを、政府統計と主要民間調査の公開データに基づいて7つの実践策に整理します。求人票・スカウト・面接運用・未経験採用の判断軸・KPI設計まで、明日から動かせる粒度で解説します。引用はすべて厚生労働省・マイナビキャリアリサーチ・パーソルキャリア(doda)など一次情報のみです。
営業職採用の現状|最新データで整理
① 有効求人倍率1.18倍|求職者優位が継続
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」によれば、有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で前月と同水準。新規求人倍率も2倍超で推移しており、求職者1人に対し求人2人前後という求職者優位の市場が続いています[1]。営業職は通年で募集が出続けるポジションのため、求人の母数増加の影響を最も受けやすい職種の1つです。
② 中途採用に積極的な企業は90.1%、1社平均20.8人
マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」では、2025年に中途採用へ積極的な企業は90.1%、2024年の1社あたり中途採用人数は平均20.8人、採用費用は平均650.6万円(前年比+20.4万円)と報告されています[2]。コストをかけても採用が追いつかない構造のなかで、営業職は最大の採用ボリュームを占める職種であり、競合の中で勝ち抜く設計が必要です。
③ 営業系の平均年収469万円|過去8年で最高水準
doda「平均年収ランキング2024年版」では、営業系の平均年収は469万円(前年比+13万円)と、2017年からの集計で過去最高となりました[3]。職種別ではMR(医薬情報担当者)が764万円でトップ、医薬品メーカー営業552万円、銀行営業515万円と続きます[3]。営業系18職種のうち15職種で前年から年収が上昇しており、競合企業の処遇引き上げが市場全体の給与レンジを押し上げています[3]。
④ 転職理由の1位は「給与」、2位は「仕事内容」
マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」では、転職した正社員の転職理由は「給与が低かった」が23.2%で1位、続いて「仕事内容に不満があった」21.0%、「職場の人間関係が悪かった」20.0%となっています[4]。営業職においても「給与レンジの透明性」「営業スタイルや扱う商材の明示」が応募・入社決定の最重要要素であることが、調査データからも裏付けられます。
営業職の採用が難しい3つの構造的な理由
理由1|募集ポジションが多く、競合が業界横断
営業職は業界横断で需要があるため、同じ「法人営業3〜5年目」のスキルセットでも、SaaS・人材・金融・製造・広告など複数業界の求人と比較されます。求職者は職務内容ではなく業界・商材・顧客層・営業スタイル(新規/既存、個人/法人)で比較するため、求人票でこれらを具体化していないと検討対象に入りません。
理由2|離職率が相対的に高く、常時補充が必要
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」では、産業計の離職率は15.4%、入職率16.4%で入職超過と報告されており[5]、人材の流動性が高い状態が続いています。営業職は成果プレッシャー・労働時間・処遇格差から相対的に離職が起きやすく、欠員補充の頻度が高いため、常時応募を集める仕組みが必要になります。
理由3|年収レンジが上昇し、競合企業の処遇に追従できない
前述のとおり営業系平均年収は469万円(+13万円)[3]と、競合企業の処遇が一斉に引き上がっている中で、自社の給与レンジが据え置きだと候補者の比較で必ず劣後します。固定給だけでなくインセンティブ設計・評価基準の透明性を提示できるかが、応募と内定承諾の分岐点になります。
営業職の採用を成功させる7つのコツ
コツ1|求人票で「営業スタイル」を徹底的に具体化する
営業職の応募決定要因の中心は「営業スタイル」です。新規/既存・個人/法人・対面/インサイドセールス・商材(無形/有形)・客単価・営業サイクル(短期/長期)・1日あたりの架電や訪問件数を求人票に具体的に書きます。応募者は「自分のキャリアで活かせる経験になるか」をこれらの軸で判断します。マイナビ調査で「仕事内容に不満があった」が転職理由2位(21.0%)に上る現実[4]を踏まえると、入社後ギャップを防ぐためにも具体化は必須です。
コツ2|給与レンジとインセンティブ設計を透明化する
マイナビ調査で転職理由1位「給与が低かった」(23.2%)[4]のとおり、給与は応募・入社決定の最大要素です。求人票には固定給レンジに加え、インセンティブ計算式・想定実年収レンジ・評価のタイミングを明記します。同職種のdoda平均年収(営業系469万円[3])と比較して下回る場合は、年収以外の労働時間・福利厚生・成長機会で差別化要素を提示します。
コツ3|2024年4月労働条件明示改正に沿って「正直に書く」
2024年4月施行の労働条件明示改正により、就業場所・業務内容の「変更の範囲」等の明示が労働契約締結時に義務化されました[6]。求人票段階でも採用後のミスマッチを避けるため、変更可能性のある職務(営業エリア変更、扱う商材変更、内勤併用など)を事前に開示する運用が安全です。求人票での過大表現は、入社後の早期離職(求職者の信頼喪失)を招き、結果的に再採用コストを増やします。
コツ4|スカウト・ダイレクトリクルーティングで母集団を拡大する
営業職は「自分で転職活動する層」だけでなく、「いい話があれば検討する」層(潜在転職層)が大きい職種です。求人媒体への掲載だけでなく、ビズリーチ・doda Direct・Wantedlyなどでスカウトを継続送付することで母集団が拡大します。スカウト文面では一斉送信ではなく、候補者の経歴に踏み込んだ個別文面(営業経験の具体的な共通点、ポジションで提示できる成長機会)を作り込むのが返信率を引き上げる近道です。
コツ5|応募から1次面接までを「3営業日以内」に
営業職の候補者は同時並行で複数社と接点を持っているケースが大半です。応募後の連絡が遅れると、先に1次面接が組まれた競合に流れて辞退されます。具体的な目安は、応募当日〜翌営業日に書類選考連絡、3営業日以内に1次面接日程提示です。一次面接をオンライン+現場マネージャー1人で30〜45分の短尺に圧縮し、評価ポイントを「適性/意欲/コミュニケーション」に絞ると、日程確保と通過判断の両方が速くなります。
コツ6|未経験・第二新卒・異業種営業からのポータブル採用枠を設ける
経験者層だけで採用ピースを埋めようとすると、競合の処遇引き上げに巻き込まれて未充足が続きます。「営業未経験/異業種営業経験者向け」の別枠ポジションを作り、商材理解・架電・面談ロールプレイのトレーニングを内製化することで、母集団を倍増できます。20代未経験層の獲得は中長期の人件費抑制にも寄与します。マイナビ調査でも、企業は採用対象拡大の方向に動いており[2]、未経験枠の整備は実務的なボトルネック解消策です。
コツ7|リファラル採用とインセンティブ設計
営業職は社外人脈が広い職種のため、リファラル採用との相性が高いのが特徴です。紹介者向けインセンティブ(10〜30万円程度のレンジが一般的、当社調べの目安)を制度化し、四半期ごとに紹介依頼の社内告知を回します。リファラルは応募者の自社理解が深い状態で入ってくるため、書類選考通過率・内定承諾率・1年定着率ともに媒体経由を上回りやすく、採用単価を下げる効果があります。
営業職採用のKPI設計|量と質を両立する
営業職採用では、母集団形成から内定承諾までを以下のファネルKPIで管理します。数値はあくまで業界・採用難度で大きく変動するため、自社の過去実績をベンチマークとし、四半期ごとに見直す運用が前提です。
| 選考段階 | KPI例 | 目安レンジ(当社推計) |
|---|---|---|
| 露出(求人閲覧) | 求人ページPV、媒体内表示回数 | 1ポジション月500〜2,000PV |
| 応募 | 応募数、応募率(応募÷PV) | 応募率1〜3% |
| 書類選考通過 | 書類通過率 | 30〜50% |
| 1次面接通過 | 1次通過率 | 40〜60% |
| 最終面接通過 | 最終通過率 | 50〜70% |
| 内定承諾 | 承諾率 | 50〜70% |
これらの数値は業種・ポジション・年収レンジで大きく変動するため、上記はあくまで運用開始時の目安レンジ(当社推計)として扱い、3か月稼働させたうえで自社実績に置き換えます。詰まっている工程(応募率が低い/1次通過率が低い/承諾率が低い)から個別に打ち手を入れます。
採用代行(RPO)を活用すべきケース
営業職採用で採用代行を活用しやすい代表的な業務は以下の通りです。「応募者対応のSLA確保」「スカウト送付の継続稼働」「日程調整の即応化」は内製で詰まりやすく、外注に切り出すと採用担当・現場マネージャーの工数を取り戻せます。
- スカウト運用代行:ターゲット設定、文面作成、送付、レポーティング
- 応募者対応代行:書類選考、初回返信、日程調整、辞退対応
- 1次面接代行:スクリーニング面接の実施、評価レポート作成
- 媒体運用代行:求人原稿改善、A/Bテスト、運用最適化
- レポーティング:ファネルKPIの週次・月次レポート作成
判断基準は3つです。(1)応募者対応・スカウト・日程調整の工数が回らない、(2)社内に媒体運用やスカウト文面のノウハウがない、(3)採用目標が直近6か月以内で未達見込み——いずれかに当てはまる場合は、ボトルネックになっている工程に絞って2〜3か月の短期契約で運用力を検証するのが安全です。
よくあるご質問
Q1|営業未経験者の採用はどこまで広げてよいですか?
未経験枠を設ける場合は、(1)入社後3か月の研修プログラム(商材理解・架電・面談ロールプレイ)、(2)1年目の評価基準を「成果」ではなく「行動量」に置く、(3)OJTメンター制度——の3点を整えるのが前提です。整っていない状態で未経験を入れると早期離職が起き、再採用コストでむしろ赤字になります。
Q2|給与レンジは正直に書くと応募が減りませんか?
マイナビ調査では転職理由1位が「給与が低かった」(23.2%)[4]であり、給与情報が不明確な求人は応募段階で外されます。給与レンジが市場と比較して下回る場合は、固定給以外のインセンティブ計算式の透明性・労働時間・成長機会・福利厚生で差別化要素を提示するのが現実解です。レンジを隠す方が長期的な応募率を下げます。
Q3|スカウトの返信率を上げるにはどうすればよいですか?
一斉送信文面ではなく、(1)候補者の経歴のうち自社ポジションと重なる部分を冒頭で言及、(2)提示できる成長機会・実年収レンジを具体的に明記、(3)初回はカジュアル面談(30分・選考フラグなし)を提案——の3点で返信率が改善します。送付タイミングは平日朝・昼休み・夕方が一般的に開封率が高いとされます(媒体ごとに変動)。
Q4|2024年4月の労働条件明示改正で求人票はどう変わりましたか?
2024年4月施行の改正では、労働契約締結時に就業場所・業務内容の「変更の範囲」、有期労働契約の更新上限、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件などの明示が義務化されました[6]。求人票段階でも、採用後の説明と齟齬が出ないよう、変更可能性のあるエリア・職務・業務内容を事前に開示する運用が安全です。
Q5|採用代行は月いくらから依頼できますか?
料金体系は従量課金型(業務単位)・月額固定型(ライト〜ハイ)・成果報酬型・プロジェクト型と幅広く、月額10万円台のライトプランから月額数十万〜100万円超の大規模プランまで選択肢があります(業務範囲・採用難度で変動。当社調べの目安)。最初はボトルネックになっている工程に絞って2〜3か月の短期契約で運用力を検証するのが安全です。
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参考資料
[1] 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67666.html
[2] 株式会社マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250326_93514/
[3] パーソルキャリア株式会社「平均年収ランキング(職種・職業別の平均年収)【2024年版】」
https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/2024/
[4] 株式会社マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250312_92959/
[5] 厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html
[6] 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
