「求人を出しているのに応募が来ない」「掲載しても他社に取られる」――求人が機能しないとき、媒体や費用を変える前に見直すべきは求人票そのものの作り方です。求人票は、求職者が応募を決める「最後の意思決定資料」であり、ここで伝わるかどうかで応募数が大きく変わります。
本記事では、求職者調査(マイナビ転職動向調査2025年版)と職業安定法上の必須明示事項を踏まえ、応募が増える求人票の作り方を「7つの構成要素」「具体的な書き方テンプレート」「NG例/OK例」「改善サイクル」までまとめて解説します。出典はすべて政府資料・民間の一次調査をもとにしています。
なぜ「求人の作り方」で応募数が変わるのか
応募市場は活況、でも採用は埋まらない
マイナビが運営する転職情報サイトのデータでは、2025年7月時点の正社員求人件数は2023年平均比169.0%、応募数は同128.8%と高水準で推移しています[5]。一方、リクルートワークス研究所の中途採用実態調査では、2024年度上半期に必要な人数を確保できた企業は40.3%、できなかった企業は57.8%(中途採用確保D.I.-17.5ポイント)と、人材確保の難易度は依然として高い状態です[4]。
応募と求人は増えているのに採用は埋まらない──このギャップは、「求人票が求職者に届いていない/刺さっていない」ことを示すサインです。市場全体で応募者の比較対象が増えているからこそ、自社の求人を「選ばれる求人」にする設計が不可欠になっています。
求職者の選び方は「給与」と「働き方」の両軸
マイナビ「転職動向調査2025年版」(2024年に転職した正社員1,500名対象)によれば、転職理由のトップは「給与が低かった」25.5%、転職先決定理由のトップは「給与が良い」25.9%(全体・男性)、女性は「希望の勤務地である」29.4%でした[3]。
さらに、「応募意欲が上がる福利厚生制度」のトップは「退職金制度がある」が42.8%と、待遇に関する情報開示が応募意思決定に与えるインパクトが示されています[3]。求人票は「給与・勤務地・福利厚生」を曖昧にせず、求職者が知りたい情報を先回りして開示する設計が応募数を押し上げます。
【法令ベース】求人票に必ず明示すべき事項(職業安定法5条の3)
魅力を語る前に、まず必須の法令対応を確認します。職業安定法第5条の3により、労働者の募集時には以下の労働条件を明示することが義務付けられています。さらに2024年4月の改正で、明示事項が追加されました[1][2]。
| 明示項目 | 主な内容 | 2024年4月改正で追加? |
|---|---|---|
| 従事すべき業務の内容 | 具体的な業務範囲 | 業務の変更の範囲も追加[2] |
| 就業場所 | 勤務地 | 就業場所の変更の範囲も追加[2] |
| 労働契約期間 | 無期/有期、有期なら期間 | 有期の更新基準・通算上限・更新回数上限も追加[2] |
| 試用期間 | 有無と期間 | 期間の明示が必要 |
| 始業・終業時刻、休憩、休日、所定外労働の有無 | 労働時間関連 | ― |
| 賃金 | 賃金形態(月給/日給/時給)、基本給、固定残業代含む場合は内訳 | ― |
| 加入保険 | 健保・厚生年金・労災・雇用保険 | ― |
| 募集者の氏名/名称 | 採用主体 | ― |
| 派遣労働者として雇用する旨 | 派遣の場合のみ | ― |
| 就業場所における受動喫煙防止措置 | 屋内禁煙、喫煙室の有無等 | ― |
2024年4月以降は、特に「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」の記載漏れが多くなりがちです。求人票テンプレートの定期見直しをおすすめします[1][2]。
応募が増える求人の「7つの構成要素」
必須事項を満たしたうえで、求職者の意思決定を後押しする魅力的な求人には、共通する7つの構成要素があります。順番にも意味があり、上から読み進めることで応募意欲が高まる設計です。
① ターゲットを明確にしたキャッチコピー
冒頭の見出しで、「誰に向けた求人か」を一文で伝えます。職種+ターゲット+特徴の3点を15〜25文字に凝縮します。例:「20代未経験歓迎/土日休みの法人営業(インサイドセールス)」。曖昧な「やりがいのある仕事です」では他社との差別化ができません。
② 仕事内容を「1日の流れ」で具体化
業務範囲を箇条書きで列挙するだけでなく、「入社後1か月/3か月/6か月のステップ」「1日のスケジュール例」を入れます。求職者は「働いた自分」がイメージできるほど応募意欲が高まります。マイナビ調査でも転職理由の2位に「仕事内容に不満があった」が挙がっており、入社後ギャップを避ける情報開示は重要です[3]。
③ 給与レンジと評価制度の根拠
マイナビ調査で転職先決定理由のトップが「給与が良い」(全体25.9%)であることを踏まえ、年収レンジは必ず明示します[3]。さらに「下限・上限の根拠」(経験年数別の例、評価基準)を添えると、求職者は自分の市場価値と照らせるため応募の心理的ハードルが下がります。固定残業代を含める場合は、必ず時間数と金額を内訳で明示します[1]。
④ 働き方(時間・休日・場所)の透明化
女性の転職先決定理由トップが「希望の勤務地である」29.4%であるように、勤務地・勤務時間・休日の透明化は応募の決定要因です[3]。「フルリモート可」「フレックス(コア10-15時)」「完全週休2日(土日祝)」など、求職者が比較しやすい粒度で記載します。業務・就業場所の変更の範囲も2024年改正対応として明示が必要です[2]。
⑤ 福利厚生・制度の具体化
マイナビ調査では、応募意欲が上がる福利厚生制度のトップは「退職金制度がある」42.8%でした[3]。退職金、住宅手当、家族手当、育児支援、研修制度などは「あり/なし」だけでなく、金額や対象条件まで書き込むことで他社との差が明確になります。
⑥ 企業文化・チームの様子
給与・勤務地と並んで、職場の雰囲気は意思決定に影響します。マイナビ調査でも転職理由の3位に「職場の人間関係が悪かった」が挙がっており、入社後の人間関係への不安は転職の重要要因です[3]。チーム構成、年齢・性別バランス、上司の経歴、コミュニケーションスタイル(チャット中心/対面中心/会議の頻度)など、入社後の「誰と働くか」を具体的に伝えます。
⑦ 選考フローと応募後の体験
選考プロセス(書類→一次面接→二次面接→内定)、各段階の所要日数、面接形式(オンライン/対面)、当日の流れまで記載します。求職者は「応募してから内定まで何日かかるか」を比較しており、選考スピードは応募意欲に直結します。応募後24時間以内の連絡を明記すると、応募率がさらに上がります。
求人票テンプレート|上から読み進められる順番
- キャッチコピー(職種+ターゲット+特徴/15〜25文字)
- 仕事のサマリー(3〜5行で「誰に・何を提供する仕事か」)
- 仕事内容の具体化(業務リスト+1日のスケジュール+入社後の成長ステップ)
- 応募要件(必須/歓迎/除外条件を分けて明示)
- 給与・評価(年収レンジ/賃金形態/固定残業代の内訳/評価制度の概要)
- 働き方(勤務時間/休日/勤務地/リモート可否/就業場所の変更の範囲)
- 福利厚生・制度(退職金/住宅手当/研修/家族手当などを金額・条件付きで)
- 企業文化・チーム(チーム構成/上司/コミュニケーションスタイル)
- 選考フロー(書類→面接の流れ/所要日数/面接形式/応募後の連絡スピード)
- 会社紹介・採用背景(事業の現状/なぜ採用するのか)
- 必須明示事項(契約期間/試用期間/加入保険/受動喫煙措置/募集者名等)
NG例 → OK例|求人票の書き換えビフォーアフター
| 項目 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
| キャッチコピー | 「やりがいのある営業職」 | 「20代未経験OK/土日休みの法人インサイドセールス(リモート可)」 |
| 仕事内容 | 「営業全般」 | 「新規開拓50%/既存深耕30%/企画20%。1日のうち電話30件、商談2件、ナレッジ共有1時間」 |
| 給与 | 「能力に応じて優遇」 | 「年収400万〜650万円(経験3年で500万円、5年で600万円相当)。固定残業20時間分3万円含む(超過分別途)」 |
| 勤務地 | 「全国」 | 「東京本社(六本木)勤務/業務の変更の範囲:本社内の各事業部/就業場所の変更の範囲:本社のみ(転勤なし)」 |
| 福利厚生 | 「各種社保完備」 | 「健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険/退職金制度(勤続3年以上)/住宅手当月2万円(賃貸住まいの場合)」 |
| 選考フロー | 「面接複数回」 | 「書類選考(3営業日以内)→一次面接(30分・オンライン)→二次面接(60分・対面)→内定。応募から内定まで最短10営業日」 |
NG例の共通点は抽象的・曖昧であること。OK例の共通点は数字・条件・スケジュールで具体化されていることです。「求職者が比較できる情報粒度」を意識すると、自然と魅力的な求人になります。
求人票の改善サイクル|PDCAをどう回すか
魅力的な求人は「一度作って終わり」ではなく、応募データを見ながら改善し続けることで磨かれます。月次で以下の指標を確認します。
- 表示数→クリック数(CTR):低い場合はキャッチコピーと仕事サマリーを見直す
- クリック数→応募数(応募率):低い場合は給与・勤務地・福利厚生の透明性を見直す
- 応募数→書類通過率:高すぎる/低すぎる場合は応募要件の表現を見直す
- 応募後の辞退率:高い場合は選考フローのスピードと面接体験を見直す
- 不採用理由・辞退理由:求人票と実態のギャップを示すサインを拾う
1要素ずつ変更してA/Bテストできれば理想ですが、媒体仕様で難しい場合は「四半期に1度、最低3要素を見直す」というルールでも十分改善が回ります。
求人作成で陥りがちな5つの落とし穴
- 抽象的な魅力訴求:「やりがい」「成長できる」だけでは応募の意思決定に届かない
- 給与レンジを書かない/曖昧:求職者の比較対象から外れる
- 必須事項の漏れ:2024年改正の「業務/就業場所の変更の範囲」「有期契約の更新基準」は記載漏れが多い[2]
- 選考フローが不透明:応募から内定までの期間が見えないと辞退が増える
- 更新されない:半年以上前の情報のまま掲載すると、応募者の信頼を失う
よくある質問(FAQ)
Q. 給与レンジを明示すると応募が偏りませんか?
A. 給与は応募の最大決定要因であることが各種調査で示されています。マイナビ転職動向調査2025年版でも、転職理由・決定理由ともに「給与」が上位で、全体の25%前後を占めています[3]。明示しない場合、応募者の比較対象から外れやすくなります。レンジ+根拠(経験年数別の例)の併記が、適切な応募者を集める近道です。
Q. キャッチコピーで一番大事なのは何ですか?
A. 「誰に向けた求人か」が一瞬で伝わることです。職種+ターゲット属性+差別化要素を15〜25文字でまとめ、応募者が「自分のための求人だ」と感じる設計にします。一般的すぎる表現は他社と並んだ瞬間に埋もれます。
Q. 求人票は何文字くらいが適切ですか?
A. 文字数より情報の網羅性と粒度が重要です。本記事の「11要素」を埋めると、自然と1,500〜3,000文字程度になります。重要なのは「求職者が応募の意思決定に必要な情報がすべて書かれていること」です。
Q. 2024年4月の法改正で気をつけることは?
A. 募集時の明示事項として、(1)業務の変更の範囲、(2)就業場所の変更の範囲、(3)有期労働契約の更新基準(通算契約期間または更新回数の上限)が追加されました[1][2]。テンプレートに項目を追加し、媒体掲載時もチェック対象に含めてください。
Q. 媒体ごとに求人を変えるべきですか?
A. 媒体ごとのユーザー属性に合わせて、キャッチコピーと仕事サマリーを調整するのが効果的です。法令上の必須明示事項は媒体を問わず共通ですが、訴求の切り口は媒体の主要ユーザー(年齢・職種・志向)に合わせると応募率が上がります。
まとめ|魅力的な求人は「法令対応 × 求職者視点」の積み上げ
魅力的な求人は、抽象的なコピーで盛るのではなく、(1)職業安定法の必須明示事項を漏れなく満たす、(2)求職者が比較できる情報粒度で具体化する、(3)応募意思決定を後押しする7要素を順番に配置する、という3点を地道に積み上げて作られます。
市場は求人が増え続けているからこそ、自社の求人を「選ばれる求人」にする設計が、採用成功の起点になります。月次で表示数・応募率・辞退率を確認し、四半期で求人票の構成要素を見直すサイクルを回しましょう。
参考資料
[1] 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
[2] 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
[3] 株式会社マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」(n=1,500)
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250312_92959/
[4] リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2024年度上半期実績、2025年度見通し)」
https://www.works-i.com/research/works-report/item/midcareer2025.pdf
[5] 株式会社マイナビ「2025年7月度 正社員求人掲載数・応募数推移レポート」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250827_111069/
[6] 帝国データバンク「企業の経営課題に関するアンケート(2026年)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260304-management-issues/
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