「応募は来るが、面接で時間が取れない」「採用担当が一次面接ばかりに追われている」――そんな悩みを抱える企業が増えています。打ち手のひとつが一次面接の外注(面接代行)です。一方で、面接の代行は職業安定法上の論点も絡むため、誤ったやり方をすると法令違反のリスクがあります。
本記事では、一次面接を外注する仕組み・料金相場・法的な注意点・選び方を、厚生労働省の公開資料や民間の中途採用実態調査をもとに整理します。あわせて「外注に向いている企業/向いていない企業」も解説するので、自社の判断材料として活用してください。
一次面接を外注(面接代行)するとは?仕組みと範囲
一次面接の外注とは、応募者と最初に行う面接(書類選考通過直後のスクリーニング面接)を、社外の専門事業者に委託することを指します。一般的には採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)の一機能として提供され、面接日程調整・面接実施・評価レポート提出までを一括で請け負うケースが多くなっています。
面接代行で依頼できる主な業務範囲
| 業務 | 外注での一般的な依頼可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 面接日程の調整 | ◎ | 応募者対応・リマインド送信を含む |
| 一次面接の実施(オンライン中心) | ◎ | あらかじめ合意した評価項目に沿って実施 |
| 評価シートの作成・提出 | ◎ | 合否判断は企業側に委ねる構成が一般的 |
| 合否連絡 | ○ | 合否判定の主体は企業に残すのが原則 |
| 条件提示・給与交渉・内定通知 | ×(職業安定法の論点あり) | 後述の「委託募集」「職業紹介」の論点に該当しうる |
つまり、「採否の最終判断」と「労働条件の提示・交渉」は企業に残し、面接実施と評価レポーティングのみを委託するのが、面接代行の標準的な切り方です。
なぜ一次面接の外注ニーズが高まっているのか
背景①:中途採用市場が高止まりし、面接件数が増えている
マイナビが運営する転職情報サイトのデータでは、2025年7月時点の正社員求人件数は2023年平均比169.0%、応募数は同128.8%と高水準で推移しています[5]。前年同月比でも求人件数は138.7%、応募数は107.6%となっており、応募数の増加は採用担当者の面接対応件数を押し上げる直接要因になっています[5]。
背景②:人材確保は依然として困難で、選考スピードが勝負を分ける
リクルートワークス研究所の中途採用実態調査によると、2024年度上半期の中途採用で必要な人数を確保できた企業は40.3%にとどまり、確保できなかった企業は57.8%。中途採用確保D.I.(「確保できた」-「確保できなかった」)は-17.5ポイントと、依然として人材確保が難しい状況が続いています[3]。
また、帝国データバンクの調査では正社員が「不足」している企業は51.7%に達し、人手不足は構造的な課題となっています[4]。応募が来ているうちに迅速に面接へ進められるかどうかが、内定獲得の確率に直結します。
背景③:採用担当者は兼務が多く、面接にかけられる時間が限られる
中小企業を中心に、人事・採用担当者は労務や総務、経営企画などを兼務しているケースが大半です。応募数の増加局面では、面接日程調整・実施・評価記録だけで採用担当の稼働を圧迫し、母集団形成や内定後フォローなど他の重要業務にしわ寄せが生じやすくなります。一次面接という「件数が多く・標準化しやすい工程」を外部に切り出すことで、社内リソースをより上流/下流の工程に集中させられるのが、面接代行の本質的な価値です。
一次面接の外注:料金相場と費用体系
面接代行サービスの料金は、(1) 月額固定型、(2) 従量課金(面接1回ごと)型、(3) 成功報酬型、(4) これらの組み合わせ型に大別されます。以下はサービス事業者が公開している料金体系をもとに整理した目安です(実際の見積りはご相談ください)。
| 料金タイプ | 目安レンジ | 向いているケース |
|---|---|---|
| 従量課金(1回ごと) | 1万円〜/面接1回(評価シート別)[6] | 面接件数が月10件以下/繁忙期だけ依頼したい |
| 面接日程設定(月額) | 5万円〜/月[6] | 日程調整工数だけ削減したい |
| 月額パッケージ | 月額10万〜70万円程度(当社調べ) | 面接件数が月10件以上の継続案件 |
| RPO(採用代行)フル委託 | 月額40万〜60万円のプランが一般的[6] | 面接含む採用業務全体を委託したい |
※「当社調べ」と表記した数値は、複数の採用代行サービス事業者の公開価格を当社にて集計した目安です。サービス内容や面接職種、稼働量によって料金は変動します。
1人採用あたりに換算した費用感
たとえば月10件の一次面接を従量課金型(1回1.5万円想定)で外注した場合、月額は約15万円。一次面接通過率が3割であれば、二次以降に進む3名を確保するための「一次面接外注費」は約15万円となり、1名あたりの一次面接コストは約5万円に換算されます(当社試算・目安)。
これを社内で実施した場合、面接実施30分+準備・評価・連絡30分の合計1時間×担当者の人件費(時給4,000円換算なら4,000円)として計算しても、件数が増えるほどボトルネックは「金額」より「時間と機会損失」に移っていきます。応募者を待たせて辞退される機会損失こそが、面接代行を検討する最大の理由といえます。
【最重要】面接代行は違法?職業安定法上の論点を整理
面接の外注を検討するうえで必ず押さえるべきなのが、職業安定法上の「委託募集」と「職業紹介」の区分です。厚生労働省の公開資料に沿って論点を整理します。
論点①:報酬を伴う「委託募集」には許可が必要
厚生労働省の資料では、「労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集に従事させようとする場合」を委託募集と定義しています[2]。委託募集を、募集主が募集受託者に報酬を与えて行う場合は、厚生労働大臣(または管轄の都道府県労働局長)の許可が必要とされています[2]。
論点②:採用基準が企業側にあり、面接が「事務代行」に留まるなら委託募集ではない
一方で、採用基準を企業側があらかじめ設定し、外部事業者はその基準に従って事務的に面接を進行・評価記録するのみで、合否判定や勧誘行為を行わない場合は、委託募集には該当しないと整理されます。実務的には、外部の面接代行を「採用基準の設計=企業/面接実施=代行業者/合否判断=企業」と切り分け、報酬は面接実施に対する事務委託の対価として支払う構成が一般的です。
論点③:求職者の紹介や雇用関係のあっせんは「職業紹介」となり、別途許可が必要
厚生労働省は、「求人情報又は求職者情報を提供するのみで、求人及び求職の申込みを受けず、雇用関係の成立のあっせんを行わない場合は職業紹介に該当しない」と明示しています[1]。逆に、外部事業者が候補者を募集主に紹介し、雇用契約成立のあっせんを行えば、有料職業紹介事業の許可(職業安定法上)が必要となります[1]。
論点④:面接代行で避けるべき行為
以下のような行為を面接代行業者が行うと、委託募集や職業紹介の許可なしでは行えない領域に踏み込みます。発注前に、自社と代行業者の業務範囲を契約書で明文化しておくことが重要です。
- 企業を代理して労働条件(給与・勤務地等)を提示・交渉する
- 応募者に対して入社の勧誘・口説きを行う
- 面接代行業者の判断のみで合否を決定し、内定通知を出す
- 外部事業者が独自に保有する求職者DBから候補者を紹介する(→職業紹介許可が必要)
一次面接を外注するメリット
- 採用担当の工数削減:日程調整・面接実施・評価レポートの3工程を切り出せる
- 選考スピードの向上:面接枠を平日夜・土日も含めて柔軟に確保できるサービスが多い
- 評価基準の標準化:採用要件をもとに事前に評価項目を設計するため、担当者ごとの属人化を抑制できる
- 候補者体験(CX)の向上:面接の質を一定以上に保ち、辞退率の低減に寄与する
- 母集団形成・内定者フォローへの集中:採用担当が上流/下流の重要工程に時間を割けるようになる
一次面接を外注するデメリット・注意点
- 自社カルチャー理解には時間がかかる:依頼開始直後は評価のすり合わせが必要
- 面接記録の引き継ぎ品質に依存:評価シートの粒度・レポートの納品スピードが要
- 応募者が「外部の面接官」に抵抗を感じるケース:事前案内と質問設計でカバー
- 違法リスク管理は発注側にも責任:論点③④の整理を契約に落とし込む必要あり
- 面接代行費が固定費化しやすい:採用件数が落ち込んだ月のコストコントロール設計が必要
面接代行サービスの選び方|失敗しない6つのチェックポイント
① 業務範囲が「事務委託」として明確に整理されているか
面接実施と評価レポートまでを請け負い、合否判定や条件交渉は企業側に残す設計になっていることを契約書レベルで確認します[1][2]。
② 面接官の経験・属性が自社の採用要件に合うか
「人事経験者中心」「現場マネージャー経験あり」など、面接官のバックグラウンドが採用ポジションに適合するかを確認します。営業職には営業経験者、エンジニアにはエンジニア面接経験者など、ドメイン適合度は評価精度に直結します。
③ 評価シート・面接設計の質
自社の採用要件(コンピテンシー、必須要件、歓迎要件)に応じて評価項目を設計してくれるか。汎用テンプレートだけで運用されるサービスは、二次面接以降との連動性が低くなりがちです。
④ 面接枠の柔軟性(夜・土日対応)
在職中の中途応募者は平日昼に面接時間を取れないケースが多いため、平日夜・土日の面接枠を確保できるかは応募者の取りこぼし防止に重要です。
⑤ 料金体系と最低利用期間
月額固定型は安定運用に向く一方、面接数が少ない月にコスト負担が大きくなります。従量課金型/月額のミニマム面接数/最低契約期間を比較し、自社の応募変動に合った料金体系を選びます。
⑥ 個人情報・面接録画の取扱い
応募者の履歴書・職務経歴書・面接録画は個人情報および要配慮個人情報を含むため、データ保管期間・アクセス権・削除フローを契約書で明確化します。
一次面接の外注を始める前にやっておくべき社内準備
- 採用要件(必須/歓迎/除外条件)の言語化:採用要件のあいまいさは、外注後の評価ブレを生む最大の原因です。
- 一次面接の合格ラインの定義:何点以上で次に進めるか、定性評価のA/B/C基準などを事前に決めておきます。
- 二次面接以降との連動設計:一次面接で得た情報が二次面接でどう使われるかを設計し、評価シートのフォーマットを共有します。
- 合否連絡・内定提示のオーナーシップ整理:合否判定と労働条件提示は必ず企業側が担う形で運用設計します。
- 応募者向けの事前案内:一次面接が外部パートナーとの面談である旨を、事前案内文で丁寧に伝えます。
一次面接の外注が向いている/向いていない企業
| 判断軸 | 外注に向いている | 外注に向いていない |
|---|---|---|
| 応募数 | 月20件以上の応募がある | 応募数が少なく、母集団形成が課題 |
| 採用要件 | 定型化しやすい職種(営業/事務/オペレーション) | 高度専門職で評価軸の言語化が難しい |
| 採用担当 | 兼務で稼働逼迫している | 採用担当が複数在籍し稼働に余力がある |
| 選考段階 | 一次面接の通過率管理を強化したい | 最終面接の見極めが課題 |
| カルチャーフィット重視度 | 一次は要件適合中心で十分 | 一次から企業文化を強く伝えたい |
よくある質問(FAQ)
Q. 一次面接の外注は違法ですか?
A. 一律に違法ではありません。外部事業者が面接の実施と評価記録のみを事務的に代行し、採用基準の設定・合否判定・労働条件提示を企業側に残す形であれば、職業安定法上の委託募集には該当しないと整理されます[1][2]。一方で、報酬を伴って募集行為そのものを委託する場合は委託募集の許可、求職者の紹介を伴う場合は有料職業紹介事業の許可が必要になります[1][2]。
Q. 一次面接の料金相場はいくらですか?
A. 公開価格の例では、面接実施が1回1万円〜、面接日程設定が月額5万円〜といった従量/月額の単価が示されています[6]。採用代行(RPO)として包括的に依頼する場合は、月額10万〜70万円程度のレンジが目安です(当社調べ)。
Q. 面接代行は新卒採用でも使えますか?
A. 使えます。新卒は応募数が中途より多いケースが多く、グループディスカッションや構造化面接の代行ニーズが高い傾向にあります。ただし新卒は内定承諾までの動機形成が重要なため、一次は外注し、二次以降は社員が担当する切り分けが一般的です。
Q. 面接代行と人材紹介の違いは?
A. 面接代行は自社で集めた応募者の面接を代行するサービスです。一方、人材紹介は事業者側のデータベースから候補者を紹介し、雇用契約の成立をあっせんする事業で、職業安定法上の有料職業紹介事業に該当します[1]。両者は法的区分も成果報酬の出方も異なるため、契約時に明確に区別する必要があります。
Q. 面接代行に依頼しても、自社の選考精度は落ちませんか?
A. 採用要件と評価基準を言語化したうえで、評価シートの設計を双方で合意できれば、属人的な面接よりも評価のばらつきを抑えやすい側面もあります。重要なのは「外注先に丸投げしない」「評価結果のフィードバックループを月次で回す」という運用設計です。
まとめ:一次面接の外注は「事務委託」として設計するのが基本
一次面接の外注(面接代行)は、応募数の増加と採用担当の兼務化が進む現在、現実的な選択肢のひとつです。ただし、職業安定法上の委託募集/職業紹介との区分を理解せずに依頼範囲を広げると、無許可で行えない領域に踏み込むリスクがあります[1][2]。
ポイントは、「採用基準の設定と合否判定は企業/面接実施と評価記録は代行業者」という切り分けを契約書で明確にし、評価シートの設計と月次のフィードバックループを社内に残すことです。これにより、面接代行を採用力の底上げに使うことができます。
参考資料
[1] 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
[2] 厚生労働省 職業安定局「委託募集制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/bosyu/dl/03.pdf
[3] リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2024年度上半期実績、2025年度見通し)」
https://www.works-i.com/research/works-report/item/midcareer2025.pdf
[4] 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241113-jinzaifusoku/
[5] 株式会社マイナビ「2025年7月度 正社員求人掲載数・応募数推移レポート」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250827_111069/
[6] 株式会社アールナイン「採用代行(RPO)サービス公式ページ」(料金体系の公開情報)
https://r09.jp/service/rpo/
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