建設業の人手不足と採用|2024年問題後の最新データと有効な打ち手7選

建設業界では、2024年4月の時間外労働上限規制適用(建設業の2024年問題)が始まって以降、人手不足が一段と深刻化しています。職人や現場監督の確保が追いつかず、受注を控えざるを得ない企業も少なくありません。

本記事では、建設業の人手不足の現状を国土交通省・厚生労働省・帝国データバンクの最新データで整理し、採用と定着の両面で有効な打ち手7選を解説します。出典はすべて政府統計または民間の信頼性の高い動向調査の一次情報をもとにしています。

建設業の人手不足|最新データで見る現状

① 建設業の正社員不足割合は全業種平均を大幅に上回る

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)」(全国26,590社対象、有効回答10,735社)によれば、正社員の人手不足を感じている企業は全業種で51.4%と4月としては過去最高水準を記録しました[2]

このうち建設業の正社員不足割合は68.9%に達し、全業種平均を約17ポイント上回っています[2]。同時期の業種別では、道路貨物運送業72.2%、情報サービス69.9%、メンテナンス・警備・検査69.4%が上位に並び、建設業を含むインフラ系業種に人手不足が集中している構造が示されました[2]

② 厚生労働省データでも建設業は不足超過が突出

厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年11月)」では、正社員等労働者過不足判断D.I.は調査産業計で+46ポイントの不足超過。特に「医療・福祉」「建設業」「運輸業・郵便業」で人手不足感が高いと明示されています[4]。建設業の人手不足は単年の傾向ではなく、複数の公的・民間統計で継続的に確認できる構造的課題です。

③ 就業者数はピーク比約7割まで減少

国土交通省「令和7年版国土交通白書」によれば、建設業就業者数は1997年の685万人をピークに減少が続き、2024年は477万人(ピーク比69.6%)となっています[1]。生産年齢人口の減少という構造変化に加え、産業特性に起因する離職の多さが、就業者の減少を加速させてきました。

④ 高齢化が全産業より深刻

同白書では、2024年の建設業の年齢構成について、55歳以上の割合が36.7%(全産業32.4%)、29歳以下の割合は11.7%(全産業16.9%)と、高齢化が全産業より深く進んでいる状況が示されています[1]。今後の大量退職時代に備え、若年層・中堅層の確保が喫緊の課題となっています。

⑤ 人手不足倒産は過去最多、建設業が高水準

帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年)」では、2024年の人手不足倒産は過去最多を更新し、業種別では建設業が約3割を占めたと報告されています[3]。人手不足が経営継続の制約条件になりつつある現実が、データから明確に読み取れます。

建設業の2024年問題と採用への影響

建設業の2024年問題とは、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間、年360時間、繁忙期も特例上限あり)が適用されたことを指します[1]。これにより、従来の長時間労働を前提とした受注体制では現場が回らなくなり、1人当たりの処理量に上限が生まれた結果、必要人員が増加しています。

同時に、建設業界では公共工事の週休2日制の導入も進められていますが、国交省白書によれば、週休2日(4週8休)以上が確保できているのは公共工事で約3〜4割、民間工事で約1割強にとどまります[1]。労働時間と休日の改善が同時に求められる構造です。

建設業の人手不足の構造的な4つの原因

原因①:全産業比で「長い労働時間」

国交省白書によれば、建設業の2023年度の年間平均労働時間は2,018時間と、他産業より62時間長い水準にあります[1]。2024年問題の上限規制下でも、現場運用や工期設定との両立が課題となっています。

原因②:賃金水準が全産業平均を下回る

同白書によれば、建設業生産労働者の2023年年間平均賃金は432万円で、全産業平均(非正規除く)508万円を76万円下回る水準です[1]。賃金水準は若年層の入職意欲と定着率の双方に影響を与えます。

原因③:週休2日制の遅れ

前述の通り、週休2日以上の確保が公共工事で約3〜4割、民間工事で約1割強と他産業に比べて遅れています[1]。土曜稼働を前提とする産業構造が、若年層の応募ハードルを高めてきました。

原因④:応募市場では応募が増えているのに採用は埋まらない

マイナビが運営する転職情報サイトのデータでは、2025年7月時点の正社員求人件数は2023年平均比169.0%、応募数は同128.8%と高水準で推移しています[5]。応募市場全体は活況ですが、建設業の応募者と企業のマッチング難易度は他産業より高い構造です。求人内容・選考体験・処遇の三層を見直さない限り、応募増加が採用増加につながらない局面が続きます。

建設業の採用で有効な打ち手7選

打ち手①:求人票を「2024年問題後の働き方」に書き換える

2024年4月の労働条件明示ルール改正で、業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約の更新基準が新たに必須明示事項に追加されました[6]。建設業は転勤や現場異動の幅が広い業種であり、ここを曖昧にすると応募率が下がります。

あわせて「残業上限の遵守」「週休2日制の運用状況」「有給取得の実績」を具体的に開示すると、若年層・中途経験者の比較対象に入りやすくなります。

打ち手②:賃金レンジと評価制度の透明化

建設業の年間平均賃金が全産業比76万円低い現状[1]を踏まえ、賃金レンジは「下限・上限・経験年数別の例」を明示します。資格手当(施工管理技士、各種建設業の国家資格)、現場手当、住宅手当、家族手当などを金額・条件で開示し、求職者が他社と比較できる粒度に揃えます。

打ち手③:多様な人材(女性・外国人・シニア・異業種経験者)の採用設計

若年男性の母集団だけで充足するのが困難な現状では、女性・外国人・シニア・異業種からの転職者を含む採用設計が現実的です。それぞれに対応した職場環境(更衣室・トイレ、技能講習、在留資格対応、安全配慮)と評価制度の整備が必要となります。応募チャネルもターゲットに合わせて多様化させます(女性向け求人媒体、特定技能・技能実習生支援、シニア向け再雇用媒体など)。

打ち手④:採用チャネルの分散とダイレクトリクルーティングの活用

求人媒体だけに依存すると、応募ボリュームを増やしてもコストが線形に膨らみます。ダイレクトリクルーティング(スカウト)、リファラル採用、自社採用サイトのSEO・SNS発信、地域の高校・職業訓練校との連携を併用し、母集団の質と接点を多様化させます。施工管理職など職種別の専門媒体も活用候補です。

打ち手⑤:週休2日・残業時間など処遇の改善

採用前の求人改善だけでは中長期の充足は難しく、実態としての処遇改善が定着率と新規応募の両方を押し上げます。週休2日制の段階導入(4週6休→4週7休→4週8休)、ICT施工・BIM/CIMの導入による業務効率化、工期に余裕を持たせる発注条件の交渉などを、現場と本社の両面から進めます。

打ち手⑥:採用代行・スカウト代行の活用で工数を確保

建設業の採用担当は、現場の労務管理や安全管理を兼務するケースが多く、応募者対応・スカウト送信・面接調整に十分な時間を割けないのが実情です。採用代行(RPO)・スカウト代行・面接代行を活用すれば、応募者対応のスピードと面接設定の歩留まりを下げることなく、社内の判断業務(要件設計・現場との連携・オファー設計)に時間を集中させられます。

打ち手⑦:育成・キャリアパスの整備でリテンションを底上げ

採用を増やすだけでは離職分を補えません。資格取得支援、現場OJTと座学のブレンド、施工管理技士など国家資格までのロードマップ、管理職への登用基準を明文化し、入社後3年・5年・10年のキャリアパスを採用段階から提示することで、定着率が上がります。リテンションが上がれば、採用工数とコストの圧力も下がります。

短期 vs 中長期の優先順位|どこから着手するか

時間軸優先する打ち手ねらい
0〜3か月求人票の書き換え/応募者対応スピード/採用代行の活用応募→面接の歩留まりを上げる
3〜6か月採用チャネル分散/ダイレクトリクルーティング/賃金レンジの見直し母集団の質と量を底上げ
6か月〜1年多様な人材の採用設計/職場環境整備従来の母集団に依存しない採用へ
1年以上週休2日・労働時間の構造改革/資格・キャリアパス整備リテンションと採用力の根本改善

建設業の採用でやりがちな落とし穴

  • 媒体費を増やすだけ:応募数は増えても、求人内容と選考体験が変わらなければ採用数は伸びない
  • 採用要件を緩めすぎる:定着率が下がり、半年後の採用工数が増える
  • 賃金レンジを書かない:求職者の比較対象から外れる
  • 面接・入社判断のスピードが遅い:他社内定で辞退される
  • 育成体制がないまま採用だけ強化:早期離職が連鎖し、現場と本社の信頼関係が悪化

よくある質問(FAQ)

Q. 建設業の人手不足はどのくらい深刻ですか?

A. 帝国データバンク調査では2025年4月時点の建設業の正社員不足割合は68.9%(全業種平均51.4%)[2]、厚生労働省「労働経済動向調査」でも建設業は不足感の高い業種として常に上位に挙がっています[4]。さらに2024年の人手不足倒産は過去最多で、建設業が約3割を占めました[3]

Q. 建設業の採用は何から始めるべきですか?

A. 短期では求人票の書き換え(2024年改正対応+処遇開示)応募者対応スピードから着手するのが効果的です。中期で採用チャネルの分散と多様な人材の採用設計、長期で処遇改善とキャリアパス整備に進むのが現実的なステップです。

Q. 建設業で採用代行は使えますか?

A. 使えます。建設業の採用担当が現場兼務になりがちであることを踏まえると、応募者対応・スカウト送信・面接日程調整などの定型工程を採用代行に委託し、要件設計や現場連携などの判断業務に社内リソースを集中させるのが現実的です。

Q. 外国人材や女性の採用は本当に効果がありますか?

A. 母集団そのものを変えない限り、人手不足は構造的に解消しません。29歳以下の入職者が全産業より低い建設業[1]では、外国人材・女性・シニア・異業種経験者を含む採用設計が中長期で効きます。職場環境(設備・規程・教育)の整備が前提条件です。

Q. 2024年問題で受注を減らさないとどうなりますか?

A. 時間外労働の上限規制は罰則付きの法令です[1]。違反すれば法的リスクに加え、長時間労働の常態化は離職を加速させ、結果的に受注継続が困難になります。受注量と人員計画を連動させ、ICT施工や工期交渉で1人当たり処理量を高める打ち手と並行して進める必要があります。

まとめ|建設業の採用は「求人内容 × 多様な母集団 × 処遇改善」を同時に

建設業の人手不足は、就業者数の長期減少、高齢化、長時間労働、賃金水準、休日体制という複数の構造要因が重なった結果であり、単一の打ち手では解消できません。2024年問題で時間外労働の上限が適用された今、必要人員はむしろ増えている状況です。

採用面で最も早く成果を出せるのは、(1)2024年改正対応の求人書き換え、(2)応募者対応スピードの改善、(3)採用代行・スカウト代行による工数確保の3点。中長期では、多様な人材を含む採用設計と、賃金・休日・キャリアパスの構造改革が定着率の底上げとなり、採用力の根本的な改善につながります。

参考資料

[1] 国土交通省「令和7年版国土交通白書」(建設業の現状)
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html

[2] 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250519-laborshortage202504/

[3] 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250109-laborshortage-br2024/

[4] 厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年11月)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/r0611/index.html

[5] 株式会社マイナビ「2025年7月度 正社員求人掲載数・応募数推移レポート」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250827_111069/

[6] 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

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