中小企業の採用がうまくいかない5つの症状|数値で原因を1つに絞る診断チャート

「採用がうまくいかない」と一言で言っても、応募がゼロなのか、応募は来るが要件と合わないのか、内定を出しても辞退されるのかで、原因も打ち手もまったく違います。にもかかわらず多くの企業が「とりあえず媒体を追加する」という同じ対処に走り、月15万〜30万円の追加コストをかけて状況が変わらないまま終わります。原因を特定しないまま打ち手を選ぶことが、採用活動がうまくいかない最大の理由です。

本記事は打ち手のカタログではなく、自社の症状から原因を1つに絞り込むための診断マニュアルです。ファネルの数値を当てはめるだけで、次に手をつけるべき箇所が決まります。

この記事でわかること

  • 5つの症状分類:中小企業の「採用がうまくいかない」を、応募ゼロ/要件ズレ/途中離脱/内定辞退/早期離職に切り分ける方法
  • 数値からの原因特定:クリック率・応募率・書類通過率など6つの指標の目安と、どこで落ちているかの読み方
  • 症状別の下位原因の見分け方:同じ「応募が来ない」でも原因は3種類あり、打ち手が正反対になる
  • 誤診5パターンと損失額:よくある誤った原因特定と、それによって生じる年間60万〜200万円規模のムダ

1. 「採用がうまくいかない」を5つの症状に分解する

診断の第一歩は、漠然とした不調を観測可能な症状に置き換えることです。中小企業の採用の詰まりは、次の5つのどれかに分類できます。

症状現場での言われ方詰まっている場所主な原因の方向
A:応募が来ない「求人を出しても反応がない」認知〜応募求人票・媒体・条件の開示
B:応募は来るが違う「求める人物像と合わない人ばかり」応募〜書類選考要件定義・訴求のズレ
C:途中で離脱される「面接に来ない」「連絡が途絶える」書類通過〜面接スピード・候補者体験
D:内定辞退される「最後に他社に取られる」面接〜内定承諾条件・意向醸成・競合比較
E:定着しない「採っても1年で辞める」入社後ミスマッチ・オンボーディング

Indeed Japanが採用実務従事者1,647名に行った調査では、採用業務の課題の1位が「求める人物像と異なる人の応募が多い」(41.9%)、2位が「求人に対する応募が増えない」(40.7%)でした[6]。つまり症状AとBだけで課題の8割を占めます。ところがこの2つは、原因も打ち手も正反対です。Aは「間口を広げる」方向、Bは「間口を絞る」方向であり、混同したまま対処すると症状が悪化します。

【ここだけ押さえる】

5つの症状は同時に複数起きているように見えても、実際に手をつけるべきは1つです。ファネルは上流から詰まるため、Aが起きている状態でDの対策(内定者フォロー)に注力しても効果は出ません。最も上流で詰まっている1箇所を特定するのが診断の目的です。

中小企業は構造的に不利、という前提を先に置く

診断に入る前に、市場構造を確認しておきます。リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査によれば、2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍で2年連続の低下ですが、300人未満企業の求人数は38.5万人(前年比3.5%減)と中小企業側の採用意欲も落ちていません[1]。帝国データバンクの調査では、2026年4月時点で正社員の人手不足を感じている企業が50.6%にのぼります[3]。厚生労働省の一般職業紹介状況でも、2026年5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍です[4]

中小企業が採用に苦戦するのは、努力不足ではなく市場構造がそうさせている面が大きい——これは前提として押さえたうえで、それでも自社側で改善できる箇所を特定するのが本記事の狙いです。中小企業を取り巻く環境と打ち手の全体像は、採用できない中小企業がやるべき7つの打ち手で整理しています。

2. 【診断チャート】ファネルの数値から原因を1つに絞り込む

症状の切り分けは、感覚ではなく数値で行います。直近3カ月の採用データを、次の6指標に分解してください。

#指標計算式中小企業の目安これを下回ったら
求人表示→クリック率クリック数 ÷ 表示数1.0〜3.0%症状A(タイトル・条件)
クリック→応募率応募数 ÷ クリック数2〜5%症状A(求人票の中身)
応募→書類通過率書類通過数 ÷ 応募数20〜40%症状B(要件・訴求のズレ)
書類通過→面接実施率面接実施数 ÷ 書類通過数60〜80%症状C(スピード・体験)
面接→内定率内定数 ÷ 面接実施数20〜35%症状B/C(見極め・訴求)
内定→承諾率承諾数 ÷ 内定数60〜80%症状D(条件・競合負け)

※当社推計/業界相場目安

診断の手順

  1. 【上流から見る】①から順に目安と比較する:複数の指標が目安を下回っていても、最も上流で下回っている1つを原因箇所とします。下流の数値は上流が改善すると自然に動くことが多いためです。
  2. 【母数を確認する】応募10件未満のデータで判断しない:③〜⑥は母数が小さいと数値が暴れます。3カ月分を合算し、応募10件以上を確保してから読んでください。
  3. 【職種ごとに分ける】全社平均で見ない:営業と製造では目安がまったく違います。ポジション単位で診断します。
  4. 【表示数が取れない場合】応募数の絶対値で代用する:ハローワークなど表示数が取れない媒体では、「掲載1カ月あたりの応募数」が2件未満なら症状Aと判定します。

【注意点】

数値が取れないこと自体が診断結果になる場合があります。媒体の管理画面を3カ月開いていない、応募経路別の数字が分からないという状態なら、原因は個別施策ではなく「計測していないこと」です。この場合、まずスプレッドシート1枚で①〜⑥を記録するところから始めてください。所要は初回1時間、以降は月15分です。

診断の実例|同じ「採用できない」でも原因は別

数値の読み方を、2社の例で確認します。どちらも「求人を出しても採用できない」と訴えている中小企業です。

指標目安X社(製造・組立職)Y社(営業職)
①クリック率1.0〜3.0%2.4%(正常)0.6%(低い
②応募率2〜5%0.8%(低い3.1%(正常)
③書類通過率20〜40%33%(正常)28%(正常)
④面接実施率60〜80%71%(正常)45%(低い
⑤内定率20〜35%25%(正常)22%(正常)
⑥承諾率60〜80%67%(正常)55%(低い

※当社推計/業界相場目安

X社の診断結果は症状A-2です。求人は見られているのに応募されていないため、原因は求人票の中身にあります。実際に確認すると、給与欄が「当社規定による」、残業時間の記載なし、年間休日の記載なしでした。求人票の記載を直すだけで改善が見込め、追加費用はかかりません。

Y社は複数の指標が低いため、最も上流である①を原因箇所とします。求人タイトルが「営業サポートスタッフ(◯◯事業部)」と社内用語になっており、検索に引っかかっていませんでした。④⑥の低さは、応募者数が少ないなかで採用を急ぎ、要件を満たさない候補者まで面接に呼んでいたことの結果である可能性が高く、①を直せば下流も動くという読み方をします。

【注意点】

Y社のように複数の指標が低いとき、すべてを同時に直そうとすると、どの施策が効いたのか分からなくなります。1カ月に触る指標は1つにしてください。上流から順に直し、次の月に再測定するサイクルが最も速く原因にたどり着きます。

採用ファネルの各段階の考え方をより詳しく知りたい場合は、採用ファネルとは?各段階の改善ポイントもあわせてご覧ください。

3. 症状A:応募がそもそも来ない|下位原因は3種類ある

最も多い症状ですが、「応募が来ない」の中身は3つに分かれます。どれなのかで打ち手が正反対になるため、ここを間違えると媒体費だけが増えていきます。

下位原因見分ける数値何が起きているか最初に直す場所
A-1:そもそも見られていない①クリック率が1.0%未満検索結果に出ていない/タイトルで選ばれていない職種名・勤務地・給与をタイトルに入れる
A-2:見られているが応募されない①は正常、②応募率が2%未満本文を読んで「条件が合わない/分からない」と判断されている給与レンジ・残業時間・休日数の明示
A-3:母集団の対象が枯れている①②とも正常だが絶対数が少ない商圏内に対象者がいないターゲット層の拡張(第二新卒・主婦・シニア)

A-2が最も多く、最も安く直せる

3つのうち、中小企業で圧倒的に多いのがA-2(見られているが応募されない)です。求職者は複数の求人を並べて短時間で比較するため、情報が欠けている求人から順に外されます

欠けやすい項目は決まっています。

  1. 給与レンジ:「経験に応じて優遇」だけの記載は、比較対象から真っ先に外れます。下限と上限を数字で書きます。
  2. 残業時間:「月平均◯時間(前年実績)」と実績値で書きます。ゼロと書けない場合でも、正直な数字のほうが応募につながります。
  3. 年間休日数:「完全週休2日制」より「年間休日120日」のほうが比較されやすい表現です。
  4. 転勤の有無:転勤なしなら明記します。書かないと「ある」と解釈されます。
  5. 就業場所・業務の変更の範囲:2024年4月の改正で明示事項に追加された項目です[8]。法令対応であると同時に、求職者の不安を減らす情報でもあります。

【回避策】

A-2の場合、媒体を追加してはいけません。 見られてはいるのに応募されていない状態で露出を増やすと、同じ求人票が同じ理由で外され続け、媒体費だけが増えます。まず求人票の上記5項目を埋めてから、2週間の応募数を再測定してください。費用ゼロで応募数が1.5〜2倍になることは珍しくありません。※当社推計/業界相場目安

A-1・A-3の見分け方と対処

A-1(見られていない)は、求人タイトルの問題であることがほとんどです。求職者は「職種名+勤務地」で検索するため、タイトルに社内用語(「◯◯課スタッフ」など)を使うと検索に引っかかりません。一般的な職種名に置き換えるだけで表示数が変わります。

A-3(対象が枯れている)は、①②が正常なのに応募の絶対数が伸びないケースです。この場合のみ、媒体追加やターゲット拡張が正しい打ち手になります。判断を誤らないために、必ず①②を測ってからA-3と結論づけてください

ターゲット拡張の方向は、次の順で検討すると母集団の増え方が大きくなります。

  1. 【経験年数を緩める】必須3年→1年に下げる:入社後の教育で埋められる差なら、母集団は2〜3倍に広がります。
  2. 【雇用形態を広げる】時短・週4勤務を可とする:育児中の層や副業人材が候補に入ります。
  3. 【年齢層を広げる】第二新卒とシニアを対象に加える:競合が少ない層であり、中小企業の裁量の大きさが訴求材料になります。
  4. 【商圏を広げる】在宅・直行直帰を一部可とする:通勤時間の制約で外れていた層が戻ってきます。

4. 症状B:応募は来るが求める人と違う|ズレの正体を測る

「求める人物像と異なる人の応募が多い」は、Indeed調査で課題の1位(41.9%)に挙がった項目です[6]。書類通過率(指標③)が20%を大きく下回っていれば、この症状と判定します。

ズレの種類症状の出方根本原因検証方法
B-1:要件が言語化されていない選考担当ごとに判断が割れる必須と歓迎の区別がない3名に同じ書類を見せて判定が一致するか
B-2:求人票の訴求と要件が矛盾未経験者ばかり応募してくる「未経験歓迎」と書きつつ経験者を求めている求人票の文言と選考基準を並べて突合
B-3:媒体と層が合っていない応募はあるが年齢・経験が偏る媒体の主要利用者層とターゲットが不一致媒体の利用者属性データを確認

B-1の検証は「3人一致テスト」で行う

最も多いのがB-1です。検証方法はシンプルで、過去に見送った応募書類を3枚選び、社長・現場責任者・人事の3名に個別に「通す/見送る」を判定してもらいます。判定が割れるなら、要件は言語化されていません。

要件の言語化は、項目を増やすほど合意が取れなくなります。必須要件3つ・歓迎要件3つ・NG条件2つの計8項目に絞り、1枚に収めるのがコツです。

  1. 必須要件(3つまで):これがないと業務が成立しないもの。資格・経験年数・稼働条件など。
  2. 歓迎要件(3つまで):あれば立ち上がりが速いもの。合否は左右しない。
  3. NG条件(2つまで):これがあると確実に合わないもの。過去の失敗事例から抽出する。

【注意点】

症状Bのときに応募数を増やす施策を打つのは逆効果です。ズレた応募が増えれば書類選考の工数だけが膨らみます。Indeed調査では、採用担当者が採用フロー全体のうち面接に使えている時間はわずか16.1%[6]。ここに書類選考の負荷が乗ると、見極めの精度がさらに落ちる悪循環になります。まず要件を絞り、求人票の訴求を要件に合わせてから母集団を触ってください。

採用の型そのものが社内にない場合は、採用ノウハウがない会社でも採用できる方法も参考になります。

5. 症状C:選考の途中で離脱される|原因の8割はスピード

書類は通過したのに面接に至らない(指標④が60%未満)、あるいは選考途中で連絡が途絶える症状です。Indeed調査では、応募者と連絡が取れなくなる「ゴースティング」を74.9%の採用担当者が経験しています。

離脱ポイント目安を下回るサイン主因検証する数字
応募〜初回返信返信まで48時間超対応スピード初回返信までの平均時間
初回返信〜日程確定往復3回以上日程調整の設計候補日提示数・往復回数
日程確定〜面接当日無断欠席が2割超リマインド不在前日リマインドの実施率
一次面接〜二次面接間隔が10日超選考間隔各選考間の日数

スピードは「日数」ではなく「時間」で管理する

HRプロの調査では、面接日程調整の理想を「当日中」または「翌日中」と回答した企業が71.2%にのぼる一方、実際に要している期間は「1〜2日程度」が48.3%、「3〜5日程度」が29.7%でした[7]理想と実態のギャップがそのままゴースティングにつながっています。

応募者は複数社に同時応募しているため、返信が遅れた企業から順に検討リストから外れます。中小企業にとって、これは費用をかけずに大企業と互角以上に戦える数少ない領域でもあります。

  1. 【初回返信】応募から24時間以内に返す:内容は定型文で構いません。「受領しました/◯日までに選考結果をご連絡します」の2文で離脱率が変わります。
  2. 【候補日提示】3枠以上をまとめて出す:往復回数が平均4回から2回に減ります。面接官のカレンダーを週初に押さえておくのが前提です。
  3. 【前日リマインド】必ず送る:無断欠席の多くは失念です。前日夕方の1通で大きく減ります。
  4. 【選考間隔】各ステップ3営業日以内:社内の決裁が遅い場合は、決裁者を減らすか、期限超過で自動的に次へ進むルールを作ります。

【回避策】

症状Cの改善に必要なのは新しいツールではなく、返信テンプレート8種類と「24時間以内」の社内ルールだけです。応募受付・書類通過・見送り・日程案内・リマインド・辞退受領・内定通知・入社案内の8つを作り置きすれば、日常のやりとりの9割をカバーできます。準備は3時間で済みます。

6. 症状D:内定を出しても辞退される|比較負けの構造を見る

内定承諾率(指標⑥)が60%を下回る状態です。この症状は面接の前に勝負がついていることが多く、内定後のフォローだけでは覆せません。

辞退の理由発生タイミング中小企業が打てる手費用
給与・条件で他社に劣る内定提示時提示前に相場を確認し、レンジ上限を用意する人件費増
入社後のイメージが持てない一次面接時点現場社員との面談を選考に組み込む0円
意思決定が遅く他社が先に決まる選考中選考期間を2週間以内に圧縮0円
面接の印象が悪い各面接後質問項目の構造化・面接官の役割分担0円
会社の将来性が不安最終面接前後事業計画・数字を開示する場を設ける0円

※当社推計/業界相場目安

リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』によれば、2025年卒採用で「採用予定数を充足できた」企業は37.2%にとどまります[5]。約6割が未充足という環境では、候補者は常に複数の選択肢を持っています。待遇で真正面から競合するのではなく、意思決定のスピードと情報開示の量で差をつけるのが中小企業の現実的な戦い方です。

辞退理由は「聞ける」ものと「聞けない」ものがある

症状Dの診断を難しくしているのは、辞退理由が正直に語られないことです。候補者は角が立たないよう「他社とのご縁がありまして」「家庭の事情で」と答えます。そこで、辞退のタイミングから理由を推定するという読み方をします。

辞退のタイミング推定される真の理由確認する方法
内定提示の当日〜翌日条件(給与・勤務地)が想定と乖離面接時に希望条件を数字で聞いていたか確認
内定提示から3〜7日他社と比較して決めた選考期間が競合より長くなかったか確認
最終面接の直後面接での印象・不安最終面接の質問内容と面接官を確認
選考途中での辞退スピード・候補者体験(症状C)各ステップの日数を確認

※当社推計/業界相場目安

内定提示の当日〜翌日に辞退される場合、原因は選考プロセスではなく「条件のすり合わせ不足」です。一次面接の段階で希望年収・勤務地・入社可能時期を数字で聞き、自社の提示可能レンジと照らしておけば、最後に条件で崩れる事態は防げます。逆に、提示から数日経ってからの辞退は他社との比較負けであり、選考スピードの問題として扱います。

【ここだけ押さえる】

内定辞退が続く企業の多くは、「面接=見極めの場」としか捉えていません。候補者側も企業を評価しています。面接時間の3割を、事業の説明・キャリアパス・現場の実情を伝える時間に充てるだけで承諾率は変わります。特に中小企業は、意思決定の近さや裁量の大きさという大企業にない訴求材料を持っています。

7. 症状E:採用できるが定着しない|規模別データが示す現実

採用は成立するのに1年以内に辞めてしまう症状です。ここは中小企業にとって最も重い構造課題であり、データもそれを裏づけています。

厚生労働省の新規学卒者の離職状況調査によれば、2022年3月卒業者の3年以内離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%です[2]。事業所規模別に見ると、規模が小さいほど離職率が高いという明確な傾向があります。

事業所規模大卒3年以内離職率高卒3年以内離職率
5人未満約59%約63%
5〜29人約53%約54%
30〜99人約42%約45%
100〜499人約35%約37%
500〜999人約33%約32%
1,000人以上約28%約27%

※厚生労働省「新規学卒者の離職状況」より。数値は令和3年3月卒業者の事業所規模別データを四捨五入したもの

さらに業種別では、大学卒の3年以内離職率が宿泊業・飲食サービス業55.4%、生活関連サービス業・娯楽業54.7%、教育・学習支援業44.2%、医療・福祉40.8%、小売業40.4%と、業種によっても大きな差があります。

「採用ミス」と決めつける前に確認する3点

離職が続くと「採用の見極めが甘い」と結論づけられがちですが、原因が選考にあるとは限りません。次の3点を先に確認してください。

  1. 【入社前】提示した条件と実態が一致しているか:残業時間・休日・業務内容が求人票と違えば、選考の精度に関係なく辞めます。求人票の記載を実態に合わせるのが先です。
  2. 【入社直後】最初の1カ月に受け入れ担当がついているか:規模が小さいほど「見て覚えて」になりがちです。誰が教えるかを決めるだけで初期離職は減ります。
  3. 【入社3カ月】面談の機会が設けられているか:辞める人の多くは、辞める前に相談先がありません。月1回15分の面談で十分です。

【注意点】

症状Eが出ている状態で採用を続けると、採用コストと教育コストが二重に流出します。年間3名採用して2名辞めるなら、実質の採用単価は1.5倍です。定着の仕組みを整えるまで採用ペースを落とすほうが、総コストは下がります。

8. 誤診が最も高くつく|よくある5つの誤診と年間のムダ

診断の重要性は、誤診したときの損失額を見るとはっきりします。中小企業で頻出する誤診と、その結果生じるコストを整理しました。

#誤診実際に多い原因誤った打ち手年間のムダ
応募が来ない=媒体が弱い求人票の条件開示不足(A-2)媒体を1つ追加180万〜360万円
応募がズレる=媒体のターゲットが悪い要件が言語化されていない(B-1)媒体を乗り換え120万〜240万円
辞退される=給与が低い返信・選考のスピード(C)給与水準の引き上げ60万〜150万円/人
定着しない=見極めが甘い条件と実態の乖離・受け入れ不在(E)選考ステップの追加選考工数+月10〜20時間
採用できない=担当者の努力不足兼務による工数不足担当者への催促担当者の離職リスク

※当社推計/業界相場目安。①は媒体月額15万〜30万円×12カ月、②は乗り換えに伴う掲載費と再設計工数、③は年収ベースの引き上げ幅から算出

誤診①が最も損失が大きい理由

「応募が来ない=媒体が弱い」は、最も頻繁に起きる誤診です。媒体を追加すれば表示は増えますが、A-2(見られているが応募されない)が原因なら、同じ求人票が同じ理由で外され続けます。月15万〜30万円の追加費用が丸ごとムダになり、しかも「媒体を増やしても採れない」という誤った学習が社内に残ります。

Indeed調査では採用担当者の72.4%が他業務と兼務しており、従業員300名以下の企業では業務全体のうち採用に割けている時間が平均35.5%にとどまります。限られた時間を誤った打ち手に使うことの機会損失は、金額以上に大きいと言えます。

【回避策】

打ち手を決める前に、必ず「この施策は、どの指標を動かすためのものか」を1文で言えるか確認してください。「媒体を追加する→指標①の表示数を増やすため」と言えるなら、①が問題であることを先に確認する必要があります。言えないなら、その施策は打つべきではありません。

診断から着手までの優先順位

原因が特定できたら、効果が出るまでの速さ必要な工数で着手順を決めます。

  1. 【即日〜1週間】費用ゼロで効果が出るもの:求人票の条件明記、初回返信24時間ルール、候補日3枠提示、前日リマインド。
  2. 【2〜4週間】準備が必要だが費用ゼロ:要件の8項目化、返信テンプレート8種類、選考期間の圧縮、面接の構造化。
  3. 【1〜3カ月】費用が発生するもの:媒体の追加・入れ替え、スカウト運用の開始、採用代行の導入。
  4. 【3カ月以降】体制の見直し:受け入れ体制の整備、オンボーディング設計、採用担当の増員または外部化。

3以降を検討する段階では、外部委託という選択肢も現実的になります。採用代行の費用は委託範囲によって幅があり、応募者対応や日程調整といった定型業務の部分委託なら月10万円台から、スカウト運用を含む母集団形成では月25万〜45万円、採用戦略設計まで含むフル委託では月40万〜80万円が目安です。※当社推計/業界相場目安

自社の症状がどれか分からない場合も、数値の整理からご相談いただけます。

よくある質問

Q1. 中小企業の採用がうまくいかない一番の理由は何ですか?

A. 単一の理由はありませんが、実務上最も多いのは「原因を特定しないまま打ち手を選んでいること」です。応募が来ないのか、応募はあるが要件と合わないのか、内定を辞退されるのかで打ち手は正反対になります。Indeed調査でも課題の1位が「求める人物像と異なる人の応募が多い」41.9%、2位が「応募が増えない」40.7%で、この2つは対処が逆方向です。まずファネルの6指標を測り、最も上流で目安を下回っている箇所を1つ特定してください。

Q2. 採用データを取っていません。何から始めればいいですか?

A. スプレッドシート1枚で十分です。ポジションごとに「表示数・クリック数・応募数・書類通過数・面接実施数・内定数・承諾数」の7項目を月次で記録します。初回の作成に1時間、以降の更新は月15分程度です。表示数が取れない媒体では「掲載1カ月あたりの応募数」で代用し、2件未満なら応募獲得の段階に問題があると判定します。3カ月分たまれば診断ができます。

Q3. 応募が来ないとき、媒体を増やすのは間違いですか?

A. 常に間違いというわけではありませんが、順序があります。クリック率が正常(1.0〜3.0%)なのに応募率が2%未満なら、求人票の中身が原因なので媒体を増やしても改善しません。逆にクリック率も応募率も正常で応募の絶対数だけが足りない場合は、媒体追加やターゲット拡張が正しい打ち手です。測ってから決めるという順序を守ってください。

Q4. 中小企業の早期離職率はどのくらいですか?

A. 厚生労働省の調査によれば、2022年3月卒業者の3年以内離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%です。事業所規模別では規模が小さいほど高く、5人未満で大卒約59%、5〜29人で約53%、30〜99人で約42%、1,000人以上では約28%という傾向が出ています。ただし業種による差も大きく、宿泊・飲食サービス業では大卒55.4%に達します。自社の数値を業種・規模の平均と比べて、乖離があるかどうかで判断してください。

Q5. 2024年4月の法改正は、求人票にどう影響しましたか?

A. 2024年4月から、すべての労働契約の締結時に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になり、あわせて労働者の募集時等に明示すべき事項も追加されました。求人票の記載内容そのものが法令の対象になったということです。これは応募率の観点でも意味があり、転勤や配置転換の可能性が明示されている求人のほうが、求職者の不安が減って応募につながります。テンプレートが2024年3月以前のままなら、改訂が必要です。

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参考資料

  1. リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2027年卒)」 https://www.works-i.com/surveys/report/260423_recruitment_saiyo_ratio.html
  2. 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
  3. 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/
  4. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74004.html
  5. リクルート就職みらい研究所『就職白書2025』 https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20250220001/
  6. 大学ジャーナルオンライン「採用面接に割ける時間は業務の2割未満 Indeedが採用担当者の業務実態を調査」(Indeed Japan調査、n=1,647) https://univ-journal.jp/137063/
  7. HRプロ「面接日程調整の“理想”は『当日~翌日』も、実態は『1~5日』」 https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=3687
  8. 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
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